第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 71 - 白ハク
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 71 - 白ハク
そこでナジュがやってみせたのは、渦の中心に向かって落ち込むときに回転しながら落ち込むのを利用して、重力を頻繁に生じさせたり無くしたりすることだった。
重力があるときには、バルベル号も破片も渦の中心に向かって移動する。
重力が消失したら、遠心力によって一気に離れていく。
そこですぐにまた重力を発生させて、螺旋の中心に向かって移動をさせる。
あとは重力の中心部を移動させていけば、バルベル号も破片も衝突することなく航行できるということになる。
その後にハイパードライブを使って、超光速移動を開始すれば問題なく運搬は可能となる。
それにしても欲というのは大したものだ。
こんな荒業をやってのけられるというのは、ひとえにナジュが欲に目がくらんでくれたおかげだった。
ただし、ナジュにはまだ話していないが、精錬するのは極一部だけである。
大量の金や白金が精錬所で処理されたとかいう話しが外に漏れたら、それだけで相場は暴落しかねない。
だから、最初に精錬分した分を種銭として資産を増やした後、精錬所を買収した上で極めて高度な情報管理を行ったうえで極秘裏に残りの精錬を行う。
もし、暴落させるとしたら、売りポジションを取った後のことだ。
実際にやるかどうかは別として、やるなら全力でやる。
そのための選択肢は用意しておくつもりだった。
なんにしても、ここからが俺にとっての本格的な闘いの始まりとなる。
力技だけで片がつくほど簡単でないことは明らかなので、非常に鬱陶しいことではあるがありとあらゆる手段を想定にいれる必要があるだろう。
とはいえ、しばし俺が直接関与する場面はなさそうだ。
欲の皮が突っ張った美女が、何も指示しなくても勝手にやってくれることだろう。
そこで俺は、改めて白ハクを呼んだ。
こっちのことで手一杯だったので、放置していたのだが、その間はずっと姿を消していた。
だが、俺は呼んだらすぐに現れるだろうと確信していた。
「白ハク、今すぐ姿を現せ」
俺は無遠慮に呼びつける。
すると。
「なんだい? ボクはいつも君のそばにいるよ」
聞かれてもいないことを答えながら、白いハクビシンが姿を現した。
「一つ確認したいことがある」
俺は意図的にそこで言葉を止める。
白ハクの反応を見たかったからだ。
「……なんでも言いなよ。ボクに可能なことならなんでもするよ」