第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 70 - 運搬方法
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 70 - 運搬方法
そのまま一光年ほど離れた場所まで持っていくと、そこで手を離した。
準光速のまま移動を続ける破片に追跡用のプルーブを設置しておいて、ナジュの気を探す。
すると、意外に近くにいた。
相当急いだのだろうと思われる。
俺は、すぐにバルベル号へと戻った。
「あれなんだね……」
コックピットに入ったとたん、ナジュが言ってくる。プルーブを作動させたことで、位置情報を初めとして様々な情報が入ってきているはずである。
その瞳はあからさまなまでに、欲にくらんでいることがまるわかりだった。
「構成物質の探査はしてみたか?」
まず俺が質問したのはそれだった。
「もちろんさ。鉄や鉛も大量にあるけど、それ以上に金や白金の含有量が高いってなってるよ。あたい大金持ちだよ、どうしよう。えへへへ……」
俺の話しをどこまで覚えているものか……。というより、すっかり忘れた感じで、ナジュき気持ちの悪い笑い声をたてた。
まぁそれはそれでかまわない。やるべきことさえやってくれるならば。
「どうだ、あれをあのまま精錬所まで持っていけるか? なんなら、もっと細かく砕くことも可能だが」
バルベル号にどのくらいの搬送能力があるのかわからないので、想定よりだいぶ大きな破片を持ってきた。
大きくするのは不可能だが、細かく砕くのならいくらでも可能である。
「じょ、じょうだんじゃないよ。なんでそんなことすんだよっ。全部もってくよ、ぜぇったいだかんね!」
ナジュは見事なまでに欲の皮のつっ張った発言をしてくれた。
「それはかまわんが、バルベル号でできるのか?」
俺にとって一番肝心なのは可能かどうかという一点で、他のことはどうでもいい。
「あたいを誰だと思ってんだい! やれるよ、ぜぇったいやるよ。あたいは、不可能可能にする海賊なんだよ!」
不可能が可能になるなら、それは元々可能なんだという話しなんだが……まぁ、つっこまないでおこう。
やってみれば結果はでる。
「そうか、ならすぐにたのむ」
俺は淡々と告げる。
「わかった、見て驚くんじゃないよっ!」
コックピットが戦闘モードの全天スクリーンに切り替わる。
ナジュがやったのは、バルベル号が重力航行を使っていることを利用して、パルサーの破片を運んでいこうというものであった。
だが、それだと重力の中心部に向かってバルベル号も引っ張られることになり、当然衝突コースに乗ることになる。