第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 66 - ワイロ
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 66 - ワイロ
特に、独裁的な権力者がいるような政治体制ならばなおさらだ。
俺なら可能だろうが、ナジュに出来るかは分からない。
知ったことでもない。
俺個人としては、そんな瑣末なことに関わって、貴重な人生を不意にしたくはないので、ナジュにくれてやることになんら抵抗がない。
もちろんそんなことはないと思うが、ナジュが断ってきたなら、また別の処理方法を考えなくてはならないだろう。
さすがにそれだけの規模の金融資産をいっぺんに投げ出してしまったら、ソーグ帝国の経済活動に計り知れないダメージを与えかねないからだ。
最低でもソフトランディングをするように手を打つ必要はあるだろう。
成り行き上関わることになってしまったが、一般市民に影響を及ぼすのは最小限に留めたい。
ただ、そんな心配は杞憂であることを俺はほぼ確信していた。
「ええっ? いいの? ホントにガチで言ってる? 後でやっぱ俺のだって言っても、あたしはイヤだよ?」
ナジュは全力で受け取る気満々であった。
「ああ、好きにすればいい。そのかわり、後のことに関しては俺は一切関与しない」
薄情なようだが、全資産を完全にナジュに投げるつもりであった。
そうでなければ、俺は自分の世界に帰ることができなくなる。
「約束だよ? ほんとにほんとに、やくそくだよ?」
自分にとって重要なことなので、ナジュは同じことを二回聞いてくる。
「くどい。それに、欲にまみれるのは、実際に必要な規模の資産を確保してからにしてくれ」
俺はここら辺りでナジュを現実に戻してやる。
実際には、まだ何もやっていない状態なのだ。
いくらなんでも気が早すぎる。
「あ、ああ……そうだね。それじゃ、パルサーにいけばいいんだったよね?」
ようやく我に返ったナジュが、今度は積極的に言ってきた。
これは、丁寧に説明した効果がでたのだろう。
もちろん動機は欲にまみれた物であるが、俺としては一向に構わない。
結果として、動いてくれたらそれでいいからだ。
「ああ。ただ、できればX線放射型のパルサーがやりやすい」
ガスを噴出するタイプだと、核の重金属密度が低い可能性がある。それに、どんな物質が放出されているのかわからないので、大量に噴出されている中に飛び込むのは抵抗がある。
その点電磁波出力がメインなら、核に重金属が高密度で集まっている可能性が高いし、ガスを避けることも容易になる。