第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 65 - 資産
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 65 - 資産
「資産は増やすつもりだが、それは金融資産でやる。希少金属では限界があるからだ。精錬した金と白金の一部を種銭として、最初に金相場で一気に増やす。ただし、それらは気づかれないようにやらなくてはならない。一応言っておくが、俺たちの最終目標は金持ちになることではない。増やした資産は、ソーグ帝国の中枢に食い込むための資金に使う。ようするに、ワイロだな。金でなびかないやつもいるだろうが、それより遥かに多くの貴族連中は金でなびくはずだ。気づかれないように、様々な資金ルートを用意する必要があるが、まぁその辺りは希少金属を使って資産を確保してから話す。その前に貴族の個人データを入手する必要もあるしな。俺たちがやるべきことは本当に多い。だが、最終的な目的は一つだけだ。それだけは絶対に見失うな」
もちろん、俺とナジュでは最終目標は異なっている。
ナジュはこの英雄ゲームをクリアすることであり、俺はこのゲームのゲームマスターをつきとめて二度と俺に手を出さないように釘を刺しておくことだ。
もちろん、余計な手間をかけさせた落とし前はとってもらうつもりでいる。
冷静ではあっても、心底頭にきていることには変わりがない。
「あの……なんていうか、その資産? もしかして、全部ばらまいちゃうつもりなの?」
ナジュは控え目に言ってくるが、そう言ってくることは分かっていた。おそらく一番そこを気にしていることも。
「実際買収に使うのはほんの一部だな。足元を見られたら交渉にならない。交渉で優位に立つためには、買収相手よりも遥かに多くの資産を持っている必要がある。こいつのために働けば、もっと多くの金を貰える、そう思わせる必要があるからな。底なしの資金力というものを見せれば、欲に目がくらんだ者はこちらが言わなくても勝手に働いてくれるようになる。それが可能になるだけの金融資産にまで膨らませるつもりだ。もちろん、目標を達成した時にはほとんどが手元に残ることになるだろう。そうなったら、君に全てくれてやる。好きにするといい」
俺は説明する。
もちろん、国家予算に匹敵するくらいの金融資産など手に入れた所で、自分の欲望を満たすだけなら使い切ることなど不可能だ。
それだけでなく政治権力と結びつかなくては、遅かれ早かれむしり取られることになる。