第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 63 - 行って欲しい場所
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 63 - 行って欲しい場所
俺がついでの頼み事をするように話しを持ちかけると。
「はぁ? あたいはタクシーじゃないんだ。あんたの都合で、どこでも行くなんて思うんじゃないよ!」
俺が想像していたよりムカついていたらしく、けっこう激しい反応を返してきた。
だが、どんなにムカついていようが、そんな感情はすぐにひっくり返ることになる。
俺にはそれが分かっているのでかまわず続きを話す。
「寄って欲しいのはパルサーだ」
俺の言葉に、ナジュはけっこう驚いたらしく、はっとなって俺の方を見る。
「パルサーって、超新星爆発後の残骸だろ。あんた知ってんのか? あそこに近づくのは、艦隊戦の真っ只中に近づくより遥かに危険なんだよ。光速の半分近い速さのガスが四六時中そこら中に巻き散らかされてんだ。高エネルギーの放射線も撒き散らされてるし、近づいたら船ごと消滅しちまうよ」
ナジュにしては、かなり悲観的な発言であったが、この分析は事実そのものだった。
パルサーの近くではバルベル号の機体は一瞬とも持たない。
もちろんそれは、バルベル号だけのことではない。
ソーグ帝国とラートラ共和国、どちらの艦船であっても事情は変わらない。
最強の戦艦を持ってきても、パルサーに近づくことは不可能だろう。
もっとも、近づく必要もないのだが。
普通ならば。
「なにも、影響があるところまで近づいてくれとは言ってない。影響が及ばないギリギリの距離まで近づいてくれればそれでいい」
俺は、もう少し詳しく話す。
「はいっ? どゆこと? よってくれっていったけど、そんな離れた距離で何すんのさ?」
ナジュは本気で不思議がっている。
もちろん俺はこの件で隠し事とかするつもりはないので、素直に説明しておくことにする。
「パルサーの核から金や白金を含んだ残骸を取り出す。君にはその後のことをやって欲しい」
俺の言葉にナジュは更に顔をしかめた。
「何いってんだよ? 全然意味わかんないよ」
常識とは無縁であるようなナジュであっても、結局のところ限界がある。
これはそういう話しである。
「それでは、これからの流れを話す。最後まで聞いてくれ」
俺はナジュの反応をあえて無視する形で言葉を続けた。
「あ、ああ……」
ナジュは理解できないなりに、頷いた。
今まで俺は、ナジュが一度で理解できない時には丁寧に説明を重ねてきた。
おそらくそれが効いているのだ。