第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 62 - 選択
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 62 - 選択
ただ、ここまで巨大であり、なおかつ長い歴史が続いてきたとなると、建国当時のストイックさは良い意味でも悪い意味でも失われている。
そもそも、没落貴族なるものが出ていることでもそれが分かる。
つまりは、コネとカネの力でどうとでもなるということを意味している。
他方ラートラ共和国のことを考えてみる。
民主主義の国であるラートラ共和国の政治家が腐敗していないはずがない。
むしろ、腐敗していて当然である。
ただし、言論の自由が保証され選挙制度がしっかりと機能してる国においては、かならずどこかでバランスすることになる。
政治家の腐敗が行き過ぎると、選挙でふるい落とされることになるからだ。
腐敗という意味では、今のところ俺の想像だがソーグ帝国の方が進んでいるはずだ。
支配者層がカネに溺れるとそれを正す方法が存在しないぶん、とことんまで行ってしまうことになる。
唯一の希望は、聡明な皇帝が現れて粛清なり大改革なりを実行することだろうが。
ただ、五百年も過ぎた帝国の皇帝に、どれだけの実権が残っているのか甚だ疑問であった。
つまり、今のソーグ帝国の腐敗は抜き差しならないレベルまで進んでいるというのが俺の予想である。
そう考えると、俺が訪れるべき国は比較的簡単に決めることができた。
もちろんそれは、ソーグ帝国である。
腐敗しきった国というのは、俺のような外様の人間にとってみれば、いくらでも付け込む空きがあるということを意味しているからだ。
「ナジュ。できるだけ急いでファランシール星系に向かってくれ」
俺は決定すると、すぐナジュに行き先を告げた。
「はぁ? なんであんたが決めるんだよ?」
やっぱりというか、脊椎反射的にナジュは答えてくる。
「他に行きたいところがあれば今この場で言ってくれ。ただし、その意見を通すつもりなら、自分の存在が消滅する覚悟を持って主張するようにな」
最近、甘い対応が続いていたので、ここらで改めて釘を刺すつもりで現実というものをオブラート無しで言ってやった。
「うっ……わかったよ。いきゃいいんだろ、いきゃ……」
ぐうのネもでなくなったナジュは、悔しさを隠すことなくそんな返答をしてきた。
今後もこんな調子なのだろうが、結果として俺の指示通りに動いてくれたら問題はない。
「ああ、たのむ。ただ、途中一箇所寄って欲しい場所があるんだが。いいか?」