第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 54 - 情報
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そんな説明をしながら、俺はなんとも思わなくなって来ている自分に気づいて若干自分に引いてしまった。
どうやら恐ろしいことに、俺はナジュに馴らされてきているようだ。
できる限り早く帰還しなくてはならない理由が増えてしまったようだ。
「なーんだ、そんなことなら早く言いなよ。あたいとあんたの仲じゃないか。水臭いなぁ」
近くにいたら肩でも組んできそうな勢いでナジュが言った。
すでに言ってるよ、と言いたい気持ちと、いつの間にこんなに二人の距離が縮んだんだと思う気持ちがあったが、どちらも無視する。
そこをツッコんだら泥沼の罠にはまりそうだったからだ。
「それじゃ、指示をくれ。俺はその通りに動く」
さっきなんとなくの操作で、経験はあるが自分でやれることの限界も分かっている。
だからさっきに続いてここもナジュに聞いた方が早いという俺の判断である。
「おっ、いいねぇ。あんたも、あたしの部下が板についてきてるじゃないか。これからも、そうやってれば何かと可愛がってあげるよ」
俺の思惑など一切関係のないナジュは、何か勝手に勘違いして喜んでいるようだ。
話が早くなるので、今は勘違いさせておけばいい。
俺は状況に応じて必要な行動を取るまでのことだ。
ナジュの指示を聞きながら、いくつか生きていそうな艦橋の残骸を見て回る。
その中から状態の一番状態の良さそうな艦橋を見つけて、ベルバル号を横付けする。
俺はバルベル号から電力供給用のケーブルと信号ケーブルの両方を伸ばして、ナジュが指示した場所に接続した。
その時ナジュは艦橋にいてコンソールを扱っている。
「さすがに軍のシステムだ、ガード硬いね。さすがにこのセキュリティを破るなると、すぐに見つかっちゃうよ。どうする?」
無線から届いてきたナジュの声はどことなくはしゃいでいた。
クレアル海に飛び込んだときもそうだったが、ナジュは危険な状況に陥るとはしゃぐ性質があるようだ。
なんとも厄介な性質であるが、状況によっては頼りになる存在ともいえた。
「どうせ艦隊は動かん。見つかってもやって来るのは無人機のみだ。すべて俺が対処するからやってくれ」
俺にはそうなる確信があった。
なぜなら、元々そうなるように俺がこの状況を作り出したからだ。
今では艦隊の総司令官となった英雄同士が睨み合っている。