第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 47 - ハイパードライブ・エンジン
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 47 - ハイパードライブ・エンジン
なので、ハイパードライブ・エンジンがどうしているかというと、開いたゲートを完全にブラックボックス化して、メンテナンスフリーの状態で出荷する。推進システムとは完全に分けることで、システムの単純化を図り故障が限りなくゼロに近い状態を作り出しているのだ。
それでも故障は起こる。あるいは今みたいに破壊されることもある。
その時どうするのかというと、ハイパードライブ・エンジンをまるごと交換する。
だからハイパードライブ・エンジンを搭載したすべての艦船は、エンジンのユニット交換が可能なように設計されているのが普通である。
逆に言えば、ハイパードライブ・エンジンはそもそもが修理できるように作られていないのである。
ここら辺りのテクノロジーは、ハイパードライブシステムが量産化された宇宙だと、ほぼ同じ経路を辿るのでわかりやすい。
そのことから今バルベル号が置かれた状況を、ナジュが悲観するのは良く理解できる。
もちろん、そのこと自体は、まったく問題がない。
むしろ、問題なのは問題だと思うナジュが問題であろう。
だが、今のナジュとの会話とハイパードライブの損傷によって、俺の推測が正しいことが証明された。
しかも、物証付きで。
これは、無視できない問題であった。
だが、とりあえず、簡単なやつからクリアにしていくことにする。
「一つ確認しておくが、ナジュ、君には宇宙空間を漂流したい願望でもあるのか?」
まさかとは思うが、そんな趣味の持ち主がいないとも限らない。
「はぁ? あたいをバカにしてんのか? そんな趣味あるわけないだろ。いいかい、ハイパードライブがやられたんだ。あんたにも分かるように言うとだな、バルベル号は光の速さを超えられなくなったんだよ。エルシウムか、アルメイル。どっちの銀河に行くにしても、通常航行を使ったら五百万年以上もかかるんだ。星系圏外の宇宙空間でハイパードライブ・エンジンを失うのは、漂流してるのと一緒なんだよ」
確認してみたが趣味ではなく、ガチで見えていないだけであった。
他のやつならともかく、自称海賊を名乗っているならかなりまずい気もするのだが、めんどいので一々指摘するのはやめておく。
「それはよかった。その手の趣味がないのなら、問題解決は簡単だ……」
俺が途中まで言いかけたところで、ナジュはいきなり割り込んでくる。
「はぁ? なにが簡単なんだよ! あたいらが生きてる間には、どこの星にもいけないって言ってんだよ? 聞いてんの、あんた!」
それまで落ち込んでいたのが嘘のように、いきなり凶暴化してナジュが詰め寄ってくる。




