第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 46 - 存在消滅
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 46 - 存在消滅
俺は三機同時に気を当てて破壊すると、近くに母船がいないか探す。
すると、少し離れた場所に気を感じた。
あの部屋で感じた気である。間違いなく、英雄の気であった。
どうやら、最もやりやすいと判断して、ナジュを直接潰しに来たのだろう。
だが、気を感じていたのは極めて短時間であった。
突然気が感じられなくなる。
同時に俺が破壊した無人攻撃機の残骸も消滅する。
この分では母艦も消えたことだろう。乗船していた英雄も含めて。
俺はこの結果を見てある一つの仮設が脳裏に浮かんだ。
俺はその仮設を証明するために、バルベル号に戻ることにする。
仮設の証明は、それほど難しい話ではない。
単にナジュに話を聞けばいいだけのことだ。
俺がエアロックを中から聞こえるくらいの強さでノックすると、外殻ハッチが開いた。
コックピットに入ると、ナジュはシートの上でぐだっとなっていた。
そして、俺の顔を見ると力なく右手を上げて気のない挨拶をする。
「やは、おつかれー」
結構疲れ切ってる様子である。
「被害の状況は?」
俺が聞くと。
「あたいを誰だと思ってんだい……って言いたいとこだけどね。ハイパードライブ・エンジンをやられた。あたいら、これでめでたく漂流者さ……ははは」
ナジュは力なく、乾いた笑い声をたてる。
どうやら落ち込んでいる原因はそれだったらしい。
だとすればぐだっている理由は、聞くまでもなく納得できる。
というのも、他のものならともかく、ハイパードライブ・エンジンは修理が不可能だからだ。
工場で作られる際に、ハイパードライブ・エンジン内に高次元ゲートを開く。
特殊相対性理論で知られているように、光速に近づくと起こる質量の増大と相対時間の延伸。それと質量増加に伴う高エネルギー化……ようするに高温になる問題を解決するたるに、そのゲートで滞留する全エネルギーを高次元ゲートに逃がすのである。
仕組みとしてはひどく簡単だが、ゲートを開くことは容易ではない。
魔法技術で言う所の異世界ゲートに考え方は近いが、高次元ゲートはその先の技術である。
いわゆる時間軸まで含めた転送が可能とならなければいけないからだ。