第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 44 - 暗殺
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 44 - 暗殺
一瞬だけ艦橋内の電源が消える。非常用電源に切り替わる、時間にすればコンマ5秒ほどの間。
俺はダクトから艦橋内に進入すると、気で場所を特定していた総司令官の胸部に手を当てて気を送り込み心臓のみを破壊する。
そして、非常用の電源が点灯した時にはもう俺はダクトの中に戻っていた。
艦橋内では総司令官が突然死しているということで大騒ぎが始まっている。
だが、そのことに気を取られている余裕は、今のソーグ帝国艦隊司令部にはない。
総司令官の常軌を逸したような作戦指揮のおかげで、ソーグ帝国艦隊は全滅の危機にあるからだ。
全将兵の命がいままさに目の前で失われようとしている。
そんな時に、まるで全員を道連れにして壮大なる自殺をしようとしていたかのような作戦指揮を執っていた総司令官が死んでくれたのだ。
立場上はともかくとして、参謀本部としてはこの状況を打開すべく即座に動く必要があった。
総司令官の死は、絶望的な状況をひっくり返すための明星に思えたことだろう。
そこまでは、気配と聞こえてくる声で察することが出来たが、すぐにでも脱出する必要がある。
俺だけしか気づいていないとしても、間違いなくやったことは暗殺だ。
配電パネルが破壊されていることがわかれば、なんらかの関係性がないのか調査が始まる可能性がある。
まぁ、この状況下ですぐに取り掛かるとは思えないが、いずれにしても、これで此処での役割はお終いだ。
艦橋に乗り込んでいる英雄に見つからないように、脱出する必要がある。
俺は気をさぐり誰にも会わないように移動しながら、緊急脱出用のポッドのあるエアロックへと向かう。
非常に慌ただしい状況になっているので、通路の移動は極めて楽にできた。
なんの危なげもなく、エアロックまでたどり着く。
すると、そこには驚いたことに白ハクがいた。
なんの気配も感じられなかったので、不意をつかれたが、驚きはしなかった。
その可能性は十分考慮していたからだ。
「英雄ナルト、君に警告するよ。君のとった行動は、禁止事項に抵触する可能性が極めて濃厚だった。こういったイニシエーターを試すような行為は二度としないで」
どうやらさすがに俺がとった行動の裏の意味は、さすがに読んでいたようである。
だが、全部読んでいるわけではないことも、いまのセリフでわかった。
「ああ、気をつけるよ」
俺は表面上は素直に答えておく。