第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 42 - 読み
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 42 - 読み
挟撃された敵が前進するとわかっていたのなら、その場所に機雷を敷設しておきさいすれば、敵は被害を覚悟で突入するしかなくなる。
この作戦がハマればラートラ共和国艦隊は全滅もありうる。
状況をうまく利用しての作戦だが、さすがに俺としてはそこまで綺麗にやられてもらうと困る。
どこかでラートラ共和国艦隊の最高司令官にはご退場いただかなくてはならない。
ただし、タイミング的には今ではない。
まだ戦力的にはかなりラートラ共和国艦隊が有利に立っているし、それにソーグ帝国側の英雄にもそれなりの見せ場を作ってもらう必要がある。
できればリアルタイムで戦場の状況を確認したかったのだが、さすがにそこまで望むのは妄想というものだろう。
ひどく大雑把な把握方法ではあるが、気を探ることでなんとか推測するしかない。
俺は気配を消して、戦場の状況を把握することに専念する。
戦場全体の気の動きから察するに、もう回廊の出口間際まで迫っている。
ソーグ帝国艦隊は後退を続けているが、後方の方の動きはもう完全に整然と左右に別れ始めている。
ただラートラ共和国艦隊の総司令官は、その微妙な動きにまだ気づいていないらしく、動きに変化は見られなかった。
だが、それもさすがに時間の問題だろう。
もうすでに、ソーグ帝国艦隊のしかけた戦術は、ほとんどきまりつつある。
おそらく、ここで最後のひと押しがくるはずだ。
俺なら、最後尾が出口に達した瞬間に、艦隊が総崩れになったようにみせかけながら、本格的な後退をおこないつつ挟撃の体制を整える。
その時には、先行して動いていた駆逐艦艦隊がすでに機雷の設置を完了しているだろう。
もちろんそれは、気の動きから判断した推測だが、その推測が正しいのかどうかはすぐに分かることだ。
実際に、すぐ反応があった。
ラートラ共和国艦隊の動きが激しさを増してくる。
それまでは、きっちりと紡錘陣形をとって動いていた艦隊だが、足の早い艦が少しずつ前に出始めていた。
これは間違いなく、最大戦速による前進から全速力による前進へと命令が変わったのである。
ラートラ共和国艦隊総司令官はここを勝負時と見て、全力での戦いをしかけてきたのである。
もちろんそれは、ソーグ帝国艦隊からみれば願ってもない展開である。
自分から望んで罠の中に突入してくれるわけなので、嬉しくないわけがない。