第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 41 - ダクト内
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 41 - ダクト内
艦橋近くにたどり着くと俺は気をさぐりつつ、その直下のダクトに潜り込む。
それと同時に英雄の位置も特定しておく。
想像していたり通りに、同じ部屋にいた。
部屋の中にいるのは全部で十五人。
艦隊運用の作戦指揮を行っている作戦本部なので、いるのは殆どが参謀だろう。
総司令官もしばらくはずっと、この場所に張り付いているはずだ。
気で戦場全体の気を探ると、どうやらソーグ帝国艦隊の動きがかなり危険な感じになってきている。
一見すると、全軍総崩れになる一歩手前のようにも見えるが、それにしては後退するのが整然とし過ぎている。おまけに早すぎる。
一方ラートラ共和国艦隊は、ここを押し目と見て全艦隊の火力をさらに集中して、ここぞとばかりに前進圧力を強めていた。
間違いない。
ラートラ共和国艦隊は敵に誘い込まれている。
俺は、ソーグ帝国艦隊の動きから、おおよその戦術を予測した。
おそらくは、開戦前にラートラ共和国側の英雄が提出した作戦案と、ソーグ帝国側の英雄が提出した作戦案の折衷案だ。
このまま後退し続けるソーグ帝国艦隊を追っていけば、やがて回廊の外にでてしまう。
そうなった時、ソーグ帝国艦隊は回廊の出口で左右に分かれてそのまま挟撃の体制に入るつもりだ。
ラートラ共和国艦隊はその只中に突入することになる。
もちろん敵の目の前で足を止めて応戦するなど艦砲射撃の的になるだけなので、いくら知恵の足りない司令官であったとしても、さすがにやらないだろう。
ましてや挟撃されている状態では、あっという間に全滅してしまう可能性すらある。
もちろん、敵前回頭などはそれに輪をかけた愚策だ。反撃すらできないまま全滅させられてしまう。自殺行為と言ってもいいだろう。
それを避けるためには、前進して回廊を突破してしまうしかない。
一旦ソーグ帝国艦隊の挟撃を振り切った後、大きく回り込んでその横腹を突く位置から総攻撃をしかける。
もしくは、そのままソーグ帝国の帝都星系を目指して前進を続けることで、敵艦隊を別の会戦の場へとおびき出す。
まぁそんな所だろう。
だが、そのくらいのことは当然分かっているので、ラートラ共和国艦隊の英雄はなんらかの作戦案を立案しているはずだ。
それが何かを知っているわけではないが、予想するのはそれほど難しくはない。