第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 37 - 工作活動
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 37 - 工作活動
フェイズ6の状態では、手加減をするにしても限界があるので相手にせず、通路をぶち抜いて艦橋を目指してまっすぐ進む。
さすがに艦橋に足を踏み入れるとほぼ全員がこっちを見た。
「悪いな」
俺はそういうと、正面に向かって軽く気砲を放つ。
極限まで手加減したつもりなのだが、全面半分ほどの外殻が破壊されて、艦橋は一瞬で真空状態になった。
ちょうど、風船が破裂したときのような現象がおこった。
はじけるように、艦橋内にいた者は宇宙空間に弾き飛ばされる。
何かに捕まって留まった者もおそらく助からないだろう。
おれは、弾けた気流を利用して宇宙空間に出る。
艦橋内には艦隊総司令官を始めとして、その幕僚監部達も全員が揃っていた。
これで、ソーグ帝国艦隊は一時的に大混乱に陥ることになるだろう。
実際、今まさにそうなりつつある。
敵の猛攻を耐えていた先頭の艦艇が、いきなり艦隊本部からの通信が途絶え、動きが止まりつつある。
この状況下で前に出る動きが止まるということは、一気に押し込まれる危険性と直結していた。
実際それまでどちらかというとソーグ帝国が若干押している戦況だったが、急激にソーグ帝国艦隊の損害が急増し流れがラートラ共和国艦隊優勢へと変化し始める。
もちろんいきなり決着がつくとかいう話ではない。
俺としては、英雄たちのうち誰かが後を継いで指揮をとることになるだろうという予想の下で動いたからだ。
もちろん、そうなれば早々に流れは逆転することになるだろう。
今のラートラ共和国の艦隊総司令官では対応できないと俺は見ている。
そうなるのを待つ間に、俺はやるべきことがあった。
それはもちろん、俺がソーグ帝国にやったことと同じことをラートラ共和国側にもやるのだ。
ただ、そのためにはタイミングが問題だ。
結果として今はラートラ共和国側へと大きく戦いの流れが移ってしまった。
英雄たちの誰かが指揮をとれば、流れは逆転するだろうが、戦力は消耗したままだ。
ここで、ラートラ共和国側の英雄が登場すればそのまま一気にラートラ共和国側が戦いを押し切ってしまいかねない。
そうならないように、ほどよく戦力差が埋まるのを待つ必要があった。
だが、待ちすぎると、今度はソーグ帝国の作戦にガッチリとはまってしまって、英雄が登場した所で抜け出せなくなる可能性がある。
だから、その辺りのきわどいタイミングを見極める必要があった。