第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 34 - 放棄艦
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 34 - 放棄艦
そのあたりのことは、気を探って分かっていた。正面からぶつかっている状況を見ているとけっこうひどい有様になっている。
もちろん近くに恒星もなく、直接目視で艦艇が見えているわけではないのだが、頻繁にどこかしらで艦艇が撃沈されているので、絶え間なく丸い花火が打ち上がっているような状況になっている。
両陣営の状況を確認すると、どうやら若干帝国軍が押しているような感じなので、まずは帝国軍から手をうつことにする。
どうせ艦艇の監視機器で俺のことは探知できないので、戦場を自由に動き回ることができる。
俺は撃沈した艦艇の中で比較的に損傷の少ない艦艇を探し回る。
一番肝心なのは艦橋だ。無傷に近ければ近いほどいい。
そういうのを見つけては、外殻を力ずくでぶち抜き中に入って確かめる。
外から見た分にはほぼ無傷に見えても、中は破裂したような感じになっているものが多い。
爆発轟沈した時に装甲のない中心部からの破片を多数浴びて、原型を留めないような状況になったているのだ。
轟沈した艦艇だとだいたいそんな感じだった。
だが、俺はほぼ無傷の帝国軍の艦艇を見つける。
大きさや形状から見るに、おそらく軽巡洋艦だろう。
装甲もほぼ無傷で、撃沈された艦艇のようには見えない。
ただよく見ると、中央後方に人間大くらいの穴が空いており、どうやら貫通しているみたいだった。
おそらくそれがエンジンを直撃して、航行が不可能になったために放棄せざるを得なくなったのだろう。
俺が艦橋に近い装甲をぶち抜いて中に乗り込むと、俺の推測が正しかったことが証明された。
中は完全な闇の中かと思ったが、オレンジ色のおそらく非常灯と思われる明かりが点いていた。
だが、乗組員の気配はまったくなく、他に撃沈された艦艇すべてに共通していた物が存在していない。
大量の死体である。
撃沈された艦艇には、共通して大量の死体が浮遊していたが、ここにはそれがない。
つまり、全員ではないにしても、大部分の乗組員が脱出したということである。
他の場所なら回収して修理することも可能だろうが、戦場の最前線でそんなことは不可能である。そうなれば、戦力にならない艦艇は早々に見捨てるしかない。ましてや、これだけの消耗戦に突入しているのだ、負傷兵は大量にでているはずだし、兵士はいくらいても足りない状況だろう。