第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 33 - 戦場へ
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 33 - 戦場へ
ハイパードライブに入った宇宙船は、質量のみを位相空間に持つことで超光速を実現することになるわけだが、それは現実の空間から消えてなくなるということではない。
見かけ上はほとんど何もかわらないのだ。
細かいスターダストなら、質量がない状態でのすり抜けを行うことが可能だが、相対的に巨大な質量がある場合だと位相空間から抜け出してしまい衝突することになる。
例えるとするなら、高速道路で車が雨の中を走るようなものだろう。
雨の影響は皆無ではないが、衝突したとしても深刻なダメージにはならない。
しかし、ぶつかった相手が車だと大事故となる。
非常に乱暴な例えであるが、感覚としてはそんなものだろう。
これがあるため、ハイパードライブを運行するためには安全が確認された航路が必須なのだ。
エルミシウム銀河とアリメイル銀河の間に横たわるクレアル海が要害となっていたのは、二つの銀河を結ぶ航路の丁度中心地点に存在しているからであった。
「よし、ここら辺りでいいか?」
俺は気をさぐっていたので、戦場から十分な距離を確保出来たことはわかっていた。
「かまわん。通常航行へもどってくれ」
俺の言葉とともに、またGを体に感じる。
その感覚はすぐに消えたが、今のでハイパドライブから通常航行へ移ったことがわかる。
「ほい、ついたよ」
通常空間に入ったバルベル号は、光速の90%ほどの速度で慣性航行に入っている。
とんでもない速度ではあるが、光年単位で見れば亀の歩みといったところだろう。
「しばらくこのまま通常航行を続けていてくれ。そんなに遅くはならないと思うが、あまり遅くなるようなら近場の惑星に寄ってもらってもかまわない」
俺は簡単に指示を出しておく。
「わかった。でも、こんなとろこに惑星なんてないから、おとなしく寝とくよ」
なんのてらいもなく、寝ると言い切ったナジュには寧ろ関心した。
俺だけ働かせて悪いなどとは、微塵も思っていないのだろう。
まぁその方が、俺も余計な気は使わなくてすむので返って都合がいい。
俺はエアロックに向かい、自分で操作してハッチを開く。
そこから外に出ると、バルベル号から距離をとりつつフェイズシフトを行う。
フェイズ6まで上げたところで、クレアル海まで戻ってくる。
俺が作った回廊の中央付近で激しい戦いは続いていた。