第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 27 - 脱出
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 27 - 脱出
最初から最後まで一方的な戦いとなったケレン戦役は、ラートラ反抗同盟艦隊の全滅によって終わりを迎える。
ラター大将は戦死し多くの将兵の命が失われたが、悲劇はまだ始まったばかりであった。
反旗を翻した星系に対して、皇帝サウラーは呵責のない報復を行う。
虎の子の艦隊を失ったラートラ反抗同盟は降伏の意思を示すが、なんの役にもたたなかった。
反抗同盟内の居住惑星に対して、皇帝サウラーは小惑星の落下を命じる。
女子供も含めて、ただの一人の生存者をも許さない。
それが、皇帝サウラーの意思であった。
だが、そんな帝国の決定に対して、まだ逆らう者達が残っていた。
そう、この時のために備えて、予め脱出の準備を進めていたオッドール提督とそれに協力した政府関係者と民間人達であった。
もう直接戦えるだけの力を持っていないと考えたオッドール提督は、故郷を捨ててアリメイル銀河へと逃げ出すための計画を準備していたのである。
大量の民間人を引き連れた大船団が結成されて、アリメイル銀河へと向かっての脱出が始まった。
このことを知った皇帝サウラーは、民間人を全員殺戮するために艦隊を差し向ける。
だが、その動きを予め予測していたオッドール提督によって、手痛い反撃を受けてソーグ帝国艦隊は撤退せざるを得なくなった。
そのすきに、オッドール提督が守る民間人を乗せた大船団は、エルミシウム銀河からの脱出をやり遂げた。
すぐにソーグ帝国は追撃の艦隊を送る。
だが、ここで奇跡のような事態が起こった。
まだこの時代において、エルミシウム銀河とアリメイル銀河の間の航路は全くの未知の航路であった。
ソーグ帝国は直前でアルメイル銀河への侵攻を凍結しており、航路はやはり未知のままであった。
そう、その航路のど真ん中に存在しているクレアル海の存在を知らなかったのである。
そして、ソーグ帝国艦隊が移民船団に追いついたのは、犠牲を出しながらも移民船団がクレアル海を抜けた直後であった。
ソーグ帝国艦隊は皇帝サウラーの命令を忠実に実行しようとしてクレアル海に艦隊ごと突入し、待ち構えていたオッドール提督指揮下の護衛艦隊によって壊滅的な損害を受けてしまう。
この時、ソーグ帝国艦隊は撤退するとことなく、全艦突入という歴史上まれに見る異常な作戦を結構した。
皇帝サウラーの怒りをなにより恐れたゆえの絶望しかない作戦であった。