第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 26 - オッドール提督
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 26 - オッドール提督
後にエンドミア戦役と呼ばれることになるこの戦いにおいて、オッドール提督は四倍の戦力に対して完勝と言っていい戦果をあげた。
だが、この戦いでラートラ反抗同盟はあまりに完璧に勝ちすぎた。
周辺の星系政府が次々とソーグ帝国に対し反旗を掲げて、ラートラ反抗同盟への参加を表明した。
このことが皇帝サウラーの怒りを本気で買うことになった。
前回の倍以上となる五十万の艦隊を揃え、さらには自らが直接艦隊の総司令官として戦場に乗り出してきたのだ。
一方、膨れ上がったラートラ反抗同盟は艦艇の数こそ二十万規模に達したが、それぞれの星系政府の思惑が入り乱れるひどく纏まりに欠いた軍隊となっていた。
あまりに権力が集中しすぎるという理由から、オッドール提督は総司令官の任を解かれていた。
新たに反抗同盟に参加してきた星系政府が、力をつけすぎたオッドール提督が、その才を持ってサウラー・ド・ハイネンベルクのように独裁者になる懸念を表明した故だった。
その後任に付いたのは、マセク・ラター大将であった。
新たに参加したケレン星系軍の総司令官であり、軍事学校を主席で卒業して以来、ずっとトップの座を目指して順調に登ってきた超エリートである。
オッドール提督が四倍の敵を撃破したのなら、自分が指揮をするならば二倍強の敵を相手にすることくらいは造作もない。
皇帝サウラーが直接指揮を執るというのならば、戦場で全ての決着が付くわけでかえって都合がいい。
ラター大将は本気でそう考えていた。
この状況を見ていたオッドール提督は、裏で一部政府高官を交えて民間人と自分の直属の艦隊との共同である計画を進めていた。
その計画が実行に移されるかどうかは、皇帝サウラーが指揮を執るソーグ帝国艦隊とラター大将が指揮を執るラートラ反抗同盟艦隊の間で行われる艦隊戦の結果次第であった。
ケレン星系で行われたケレン戦役は、開始直後から一方的な包囲殲滅戦で始まった。
というのも、ラター大将はオッドール提督のとったゲリラ戦からの各個撃破を踏襲しようとした。
だが、皇帝サウラーはそのことを予め読んでおり、旗艦艦隊に襲いかかってきたラター大将率いるラートラ反抗同盟艦隊に対して、途中から反転してきた味方艦隊と共に包囲殲滅戦を仕掛けたからである。