第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 23 - 迷う
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 23 - 迷う
話しながら俺は、若干迷っていた。
限られてはいるが、一つではない。その中のどの手段を使うのか少しばかり迷ったのだ。
もちろん、その手段のすべてをナジュに話すつもりはない。
ただ単に、眠りの世界へとナジュを誘うだけの効果しかないからだ。
実際に迷っていた時間はそれほどでもない。
俺には選択に辺り、一つの明確な基準が存在していた。
極力短時間で目標を達成して、元の日本へと帰還できる方法を選択しなければならない。
二つの国家の戦争を決着させる必要もない。
この条件で絞り込めば、俺の取るべき戦略は自ずと明確に見えてくる。
俺が次に口を開いた時には、これからやるべきことは決定していた。
「というわけで、すでに計画は決まっている。ただ、計画を実行に移すためには情報が必要だ。だが、俺には端末に表示されている文字が読めない。なので君は俺の横に座って表示される文字を読み上げてくれ」
俺はナジュに楽をさせるつもりなどさらさらなかった。
「ええっ? 端末にだって自動朗読くらいできるよ?」
当然のようにナジュは嫌そうな顔をする。
「今君と話している俺のスキルは、音声を認識しているわけではない。君が話している意図が自動的に俺の理解できる言語に翻訳されているんだ。つまり、君が話してくれなければ俺のスキルは使えない」
実際には音声と連動した意図、ということになるのだが、話がややこしくなるので省いておいた。
「それって、あたいが読まなきゃダメってことなん?」
ナジュは俺の説明が理解できた様子でもなかったが、それでも雰囲気で俺の話していることが伝わったらしい。
そんな質問をしてくる。
「そういうことだ。この船の中で分かる一通りのことを調べ終わるまで、付き合ってくれ」
俺がそう言うと、ナジュはあからさまに嫌な顔をする。
「うーん、良く分かんないけど、なんか面倒い話しだよなぁ。でも、時間がないんだろ? 存在消えたくないしなぁ。仕方ない、付き合ってやるよ」
なんだかんだ不満はありそうだが、結局受け入れた。
もちろんそうするしか、他に選択肢がないからだ。
今は放置しておいても問題はないが、今後もこの調子でやられたらイザというとき問題が起きかねないのでここは一度釘を指しておくことにする。