第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 22 - 居眠り
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 22 - 居眠り
ナジュがこれまでの話しに、まったくついてこれていないことは分かっていたが、どうにも首が座らない感じになってきていて、瞼がほとんど閉じかけている。ここらで一旦目を覚ましておこうと思った。
聞いていて理解できないことと、寝ていて聞いていないこととはまったく別物であるからだ。
俺はフェイズ1の状態のまま、ナジュの前に高速で移動すると、人差し指を使って出る限りそっと額を弾く。
もちろんそれは、俺の主観での話だ。
ナジュはイスから転げ落ちると、しばらくの間床の上を転げ回ってうめていていた。
「いってぇぇぇ! いきなり何すんだよっ!」
しばらくして、痛みがある程度ひいたのだろう。
涙目で俺を見ながら必死でナジュは怒りの質問をぶつけてくる。
「デコピンをした」
俺はが教えてやると。
「そうじゃないやい! なんで、デコピンしたのかって聞いてるだよ!」
どうやら、デコピンされたことは分かっていたようだ。
「礼なら必要ない。それに、また居眠りしたら、今と同じやり方で起こしてやるから安心してくれていいぞ」
俺は出来る限り穏やかに言ってやる。
話が途中でぶった切られることになるのは若干鬱陶してが、俺としてはまったく痛くも痒くもないので、そのくらいなら特に問題はなかった。
「なっ、なんでそうなるのさ! あたいは痛かったんだよっ! 死んじゃうかと思ったんだよっ!」
それでもナジュは必死で訴えてくる。
「君は生きている。痛さのおかげで目も覚めただろう。十分効果的なことは証明できた。それに、痛いのが嫌なら居眠りをしないことをお勧めする。まぁ、俺としてはどちらでもかまわんので、好きにしてくれ」
俺は正直な気持ちを言葉にしてナジュに伝えた。
ナジュは俺の顔を睨みながら言う。
「わかったよ。あんたの話しを聞いてる間は、絶対に居眠りしないよ」
けっこう素直だった。
まぁ、逆らったところで何か代案があるわけでもないので、そうするしかないということなのだろう。
「それでは続きを話すぞ。まずは、ソーグ帝国とラートラ共和国。この二つの国の戦争が直近でどうなるのかは、今説明した通りだ。肝心なのはここからだ。俺たちがここにどうか関わるかという話しだな。わかっているとは思うが、艦隊戦に直接関わるつもりなどない。この船一隻では戦力にすらならないからだが、そもそも禁止事項の中に英雄同士の直接対決が含まれていた以上、お前さんが操縦する船で闘うことは存在の消滅を意味している。なので、必然的に取ることのできる手段は限られている」