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第03話 ドラゴン・オリジンズ - 03 - 悪夢03

第03話 ドラゴン・オリジンズ - 03 - 悪夢03


 いつもならばそのまま受験勉強を始めるところであるが、今日は荷物を置いて一旦一階へと戻る。

 すると、丁度風呂からあがったシリンと出くわす。

 首から手ぬぐいをかけただけの全裸姿であった。


「おい、服くらい着ろよ」


 すると、シリンは表情一つ変えることなく、


「いいじゃん。減るもんじゃなし」


 などとおっさんそのものの言い訳をしながら、冷蔵庫のあるキッチンへと向かった。

 ここで腹立ちまぎれで襲ったりすれば、俺の家に居座るための口実を増やすだけなので怒りを抑えこむ。

 なんにしても、短気を起こせばただでさえ最悪に近い状況なのに、それがさらに悪化することになる。

 俺は一度深呼吸をしてから、シリンの後に続いてキッチンに入った。

 すると、全裸姿のシリンが首にかけたタオルで汗を拭いながら、冷蔵庫を開けようとしているところであった。

 俺は当然のようにそれを無視して、いそいそと料理に励むチロに話しかける。


「ようチロ。どうだい、調子は?」


 するとチロは包丁を持つ手を止めて、はじけるように俺の方を振り返りながら嬉しそうに答える。


「はいっ。チロは元気ですっ!」


 まるで大型犬のように、はぁはぁしながら答えるチロであったが、あからさまに顔色がよくない。

 ヴァンパイアの顔色が青白いのはデフォルトスタンダードであるのだが、今のチロはそれを通り越して紫色になっている。

 つまり、ちっとも元気そうには見えない。

 ただし、その理由は明らかであり、俺の自己保身と人類共通の倫理的道義的な理由によるものである。

 要するにこいつの主食である血液を摂取することを禁じてきたことによる。

 だが、このままこいつが倒れてしまったら、一緒にこの家そのものが倒れかねない状況になってしまう。

 もちろん、害エルフの二人はどうでもいいが、俺まで巻き添えになるのは御免こうむる。そのためには、こいつにはなんとしてでも働き続けてもらう必要があった。


「端的に聞く。人の血以外で代行できるものはないか? エルフの血液なら、とりあえずいくらとってもらってもかまわんのだが」


 俺の言葉にチロは少し困ったような顔をする。


「ご主人さまに気になさって貰えて、チロはとっても嬉しいです。ですが、チロの体はエルフの血をどうしても受け付けないのです。エルフの血を飲むと体中に発疹が出て、激しい嘔吐に襲われてしまうのです。ですから人の血か、あるいは……いえ、チロはこのままがんばります! ですから、見捨てないでくださいね、ご主人さまっ!」


 から元気いっぱいに、俺のチロが答える。


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