第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 20 - 説明
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 20 - 説明
座ってみると、硬質な見かけと違って意外と柔らかな感触だった。
悪くない座り心地である。
「それで、どうなってんのさ?」
俺が座ると同時にナジュが聞いてくる。
さっき一度話したことは忘れて、もう一度丁寧に説明することにする。
どこまで理解してくれるのかは疑問であるが。
「俺はさっき、クレアル海の真ん中に艦隊の運用出来るだけの規模をもった回廊を作った。それまでは、クレアル海の中に小規模の戦力を投入しては小競り合いを続けてきた二つの勢力だが、これで戦略的に大きく局面が変化することになる」
ここまでは、さっき俺が説明したことであった。
「回廊を作ったって……あんた、さっきやったのってそれだったんかい?」
半ば絶句しながらナジュが言ってきた。
やはりそこに食いつくか、と思いながら俺は突き放すように言う。
「問題はそこじゃない。肝心なのは、あくまで艦隊が航行可能な規模の回廊が出来たことだ。お前が司令官ならどうする?」
俺の質問は質問してみたが、実のところそんなに期待してはいなかったのだが。
「そりゃあれだ。便利になったって喜ぶんじゃないかな?」
俺の想像を斜め上を行く返答をしてくれた。
ちっとも嬉しくないが。
「お前が司令官なら、三秒後には艦隊が全滅しそうだな。まぁ、マップを見ればすでに回答は出ているから、すぐに分かると思った俺が馬鹿だったよ。正解は回廊の制宙権を確保するだ。回廊を制した国が、圧倒的に有利に立つことができる。一方的に敵国領土内への侵攻を行うことができるから当然だが、そのくらいのことはわかるよな?」
話している途中なのだが、わざわざ訪ねたのは確認するためだ。
「も、もちろん。なんとなくだけど、わかった……ような気がする!」
なんとも微妙な言い回しでナジュが答える。
おそらく、これは分かっていないパターンだろう。
とは言え、これ以上噛み砕いた説明をやっても、時間がいくらあったところで足りなくなる。
ここは一旦最後まで通しで説明することにする。
どのみちナジュに理解してもらうことは期待していない。
俺の指示を受け入れてくれる下地を形成できたらそれでよしとする。
まぁ、その分必然的に俺の負担が増えることになる。
そうは言っても手元にあるカードでなんとかしなくてはならないということは、二度の人生を通じて俺が学んだことだ。