第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 18 - 海の中
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 18 - リミッター
クレアル海の中をあんなクレイジーな機動で抜けてきた女に普通じゃないと言われるのはいささか抵抗を感じるが、今はそれより先にやることがある。
「外に出たい、宇宙服を貸してくれ」
俺はナジュの問いかけをスルーして頼む。
「ふーん、答えたくない感じか。まぁいいや。宇宙服ならエアロックの中にあるよ。あんたにゃ少しサイズが大きいけど好きに使っとくれ。でも、さっきは平気で宇宙空間にいたのに、今更宇宙服いるのか?」
言いたいことを言わなくては気にすまないタイプだろうな、と思っていたが、やっぱりそこを聞いてきた。
「外はメタンが主成分らしいが、硫黄やアンモニア存在しているだろうからな。俺はそんなところに素潜りする趣味はない」
きっぱりと言っておく。
匂いフェチなどと誤解されたら、後々悲惨なことになるからだ。
「なぁんだ、期待して損した。それで、外にでて何するつもり?」
一体どんな期待をしていたかなんて聞かないほうがいいだろう。
それより、さっさと行動した方がいい。
「見ていればすぐにわかる」
俺はそう口にした時にはすでにエアロックに向かって歩き始めていた。
エアロックに入ると、開けられそうな扉がいくつかあった。開けてみるとつなぎっぽい服が三着ほど並んでハンガーにかけられていた。
俺は右の服を選んだ。宇宙服は、まず靴を脱いで足から着る。
最後にヘルメットを装着すると完了だ。
着てみると、ナジュが言っていた通り確かにブカブカだった。
俺よりもナジュの方がみため体がでかいので、こうなることは分かっていた。
俺の方がでかかったら着ることすらできないわけだから、それに比べたらどうということはない。
「どうだい? 準備できた?」
ヘルメット内の無線からナジュの声が聞こえてくる。
俺の目の前には、ヘルメット内のコンピューターから様々な情報が表示されているが、文字が読めない俺にはさっぱり理解できない。
「たぶん大丈夫だろう。エアロックを作動してくれ」
見切り発車になるが、俺が告げると返事もなく空気が抜けていく音がする。
それほど時間をかけることなく、外壁のハッチが開く。
俺は外に出るとバルベル号から十分な距離を取り、フェイズ6まで一気に持っていく。
周囲に強烈な波動が広がっていくが、俺はかまわず左右に向かって両手を広げて、同時に手加減なしに気砲を放った。