第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 16 - クレアル海へ
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 16 - クレアル海へ
ナジュは宇宙空間に浮かんだシートの上にちょこんと座っていた。
「さぁ始めるよ。中心部にいけばいいんだよね?」
俺に聞いてくるナジュの声は、さっきまでとは裏腹にとても楽しそうであった。
どうやら自称海賊というのも、根拠のようなものがあるらしい。
俺の評価から自称が取れるかどうかは、これからの操船を見て決めることになる。
「ああ、さっさとやってくれ」
すると加速が始まったようだ。
加速そのものは自由落下なので、直線運動を続けているかぎり何も感じない。
問題はメタンの海に潜ってからだ。
「クレアル海に入ったよ。これからは荒っぽくなるからしっかり捕まっときな!」
どうやらメタンの海のことをクレアル海と呼ぶらしい。
おそらくマップには表示されていたのだろうが、俺は読めないので今ようやく知ることができた。
ということでこれからはメタンの海ではなく、クレアル海と呼ぶことにしよう。
そう考えていると、いきなり横Gがかかった。
重力制御を右に持ってきたので、左側に遠心力がかかっているのだ。
俺は俺は問題なく両足で立っている。
もちろん気を使った姿勢制御をやっているのだが、周りから見るとそれがわからない。
「へぇ、今ので立ってられるんだ。あんた、なかなかのもんだね。でも、ここから先は流石に無理だよ。カッコつけてないで何かにつかまっときな」
どうやら俺のことを心配してくれているらしく、ナジュが言ってきた。
「おかまいなく。そっちは操縦に専念してくれ」
俺は丁重に気遣いを拒絶する。
フェイズ・シフトは使っていないとはいえ、この程度の姿勢制御ならとくに問題はない。
「へんっ。強がり言ってたってどうなるか知らないよ。遠慮なんてしないからね」
話すなり、ナジュは本当に船を戦闘機なみにぶん回し始めた。
正直な話し、俺は重力制御のみによる機動で、ここまで可能だとは思っていなかった。
俺が関心しながら見ていると、直径一キロほどの岩石の塊が纏めて三個接近しきているのが全天スクリーンで確認できた。
その三つはぶつかりそうでぶつからない。
これまで微妙なバランスの下でその状況を維持してきたのだろう。
ナジュはためらうことなく、岩石同士のぶつかりそうでぶつからないでいる空間に突入していく。
「よし、リミッター解除するよ」
宣言するかのようにナジュが言ったとたん、もう一段階の機動激しくなった。