第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 15 - 船自慢
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 15 - 船自慢
「はぁ? 正気なのか、あんた? 戦場だよ? 戦闘機も駆逐艦もウヨウヨいて、たぶん巡洋艦や戦艦もいるよ? そんなとこにこの船一隻で突っ込んでいって何しようってのさ?」
速攻で反論が帰ってきた。どうやら判断力は普通にあるらしい。
俺は簡単に説明してやることにする。
もちろん、戦術の全てではないが。
「敵の鼻先を掠めて通っても、敵は気づかないんじゃなかったのか? それに、なにも戦闘が行われている場所にいけと言っているわけじゃない。メタンの海のなるべく中心付近ならどこでもいいが、戦闘している場所を避けてくれたらそれでかまわない」
俺はとりあえずやってもらいたいことのみに話しを絞り説明する。
ナジュのようなタイプだと、あんまりややこしいことを伝えると結局全部聞いてなかった、ということがよくあるからだ。
確実にやってもらわなくては、戦術そのものが成り立たなくなる。
「なんだ、そうならそうと言いなよ。そのくらいなら、この船を持ってすれば簡単なことだよ」
ナジュはまた、エヘンという感じで胸をはってみせた。
胸を強調してくれるのは悪くはないが、毎回船自慢をされるのは鬱陶しい。
「時間制限があるのを忘れないでくれ」
俺が思い出させてやると、
「あっ、いっけね!」
ようやくナジュは動き始めた。
いっけね、じゃないだろうと言いたい所だが止めておく。
時間がもったいないからである。
マップを見ると動き出していることは確認できるが、加速する感覚はまったくない。
おそらく重力制御による加速を使っているのだろう。
ロケットエンジンのような推進方法と違ってプラズマ等が発生しないため、ステルス性能は格段に増す。
もっともその分、瞬発力には乏しく、急加速や急旋回には向いていない。
おまけにスターダストが存在すれば引きつけてしまうことになるため、アステロイドのような場所では使用は困難になるはずだ。
今から向かう場所がまさにそんな宙域なので、ナジュの操縦技術がとれほどのものなのか確認するいい機会になるだろう。
「そろそろ、全天モニターに切り替えるよ。気分が悪くなっても、そこらで吐くんじゃないよ!」
ナジュの言葉が終わるか終わらないかのうちに、俺は宇宙空間に立っていた。
もちろん、本当に立っているわけではなく、視界すべてが宇宙になったのだ。
宇宙空間の中にコックピットの機材だけが光を放っている。