第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 14 - 自称海賊と艦隊
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 14 - 自称海賊と艦隊
まぁ、こんな所でやる気を無くされたら困るのは俺なので、少し希望を持たせてやることにする。
「手はある。それに心配するのはそこじゃない。今の状況だと、あまりに得られる情報が少なすぎる。本当に考えるべきなのは、それをどう解消するかだ」
自称海賊とは言っているが、どうみても組織だって動いている気配はない。
このままだと、重要な情報にアクセスできないということになる。
今のこの状況を解決したとしても、それでは根本的な解決にはならない。
必要な活動を行うためには、せめて各国の要人に関する情報をリアルタイムに得られるくらいの環境は必要だった。
「はぁ? 何いってのさ、あんた。あたいの話しを聞いてた? 何十万もの艦隊を相手にして海賊船一隻でなんとか出来ると、本気で言ってんの?」
やはりというか、ナジュは俺の話しを頭から相手にしていない感じだった。
予想していた通りだ。この手の人間は、自分の常識の範囲内でしか想像することができない。
だが、逆に言えば実際に目の前に現実を見せてしまえば、説得する必要もなくなる。
「なら、やって見せよう。その前に一つ聞くが、この船のステルス性能はどの程度だ?」
俺は幾つか考えた作戦プランの中からどれを選択するかの参考にするために質問をする。
「はんっ。こいつは海賊船だよ? 軍の連中なんざ、このバルベル号が鼻先を掠めて通ったところで気づくもんかい」
なるほど、かなり高性能なステルス性を有しているようだ。自称だが。
「わかった。あの壁……メタンの海でも同じことができるか?」
俺はさらに尋ねる。ここがクリアできれば、俺の考えた戦術はほぼ実行可能である。
真空ならともかく、メタンの海に素潜りなんてしたくはない。
「もっちろん。この船の船体がこの形をしてるのは、ガス圏内に潜っても最大のステルス性能を発揮できるようにさ」
そういってナジュはエヘンという感じに胸を張った。
今更なのだが、ナジュの胸がやたらとデカイことに気がつく。
この女にもとりあえず一つは取り柄があったということなのだろう。
「そうか。なら、今すぐ戦場になっているメタンの海に潜ってくれ」
俺は即座に指示をだす。ナジュの言葉によって、取るべき戦術を決定したからだ。