第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 13 - 戦場
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 13 - 戦場
そんな壁が光年単位の距離で広がっており、自然の要衝となっていた。
一旦中に進入するとまともな艦隊行動は取れなくなるので、壁の外側で艦隊が対峙して睨み合う形になっているのだろう。
それぞれが、小規模の戦力を送り込んで、なんとかして突破を図ってはいるが、壁の中での戦闘はどちらにとっても被害ばかりを増やす形になっている。
さらに突破した所で、外には敵の大艦隊が待ち構えているのだ。一瞬で撃破されることになる。
もちろんそれなりのステルス能力は備えているのだろうが、どこからくるのか分かっているならなんの役にもたたない。
もちろん、ハイパードライブ等の超光速移動ができれば壁を回り込むこともできるだろうが、この方法には致命的な欠点が存在する。
ハイパードライブを解除した直後に位置を特定されてしまうのだ。
一方、待ち構えている方は見えない位置から包囲殲滅することも可能だし、それ以外にも自由な戦術的な選択をすることが可能である。
自分の位置を特定されることなく敵の位置を知ることができれば、圧倒的に有利な条件で戦いを進めることが可能となるというのは基本的な常識だ。
故に双方ともそんな戦術を取ることができないでいる。
現在の戦況はそんな状況が作り出したものだと考えていいだろう。
これで、ずいぶんと色々なことが分かってきた。
ただ、現状においてこのままでは、消耗戦にもならないような消極的な戦いがダラダラと続いていくことになる。
双方の戦力内にいる英雄達も内心焦っているかもしれない。
彼らの今の立場では、戦況を作り出すことができるような作戦立案に携われる立場にはなさそうだからだ。
だが、何か事態を一変させるような変化が訪れるなら話しは別である。
そうでなれば、双方頃合いを見て撤収するまで、こんな感じの戦いが続くだろう。
だが、それは困る。
双方の戦力内にいる英雄たちもそうだろうが、俺も困る。
さて、どうしたものかと思案していると。
「どうするんだよ、これ? こっちの戦力は見ての通り、海賊船一隻だよ? 相手は何十万隻もの大艦隊だ。それが二つもいるんだよ。あたいとあんただけで、どうにかできるのかよ。戦ったら確実に宇宙の塵になるし、戦わなければ存在を消されちゃうし。どうしろってんだよ」
おもいっきり悲壮感たっぷりの声で、ナジュが嘆き始める。