第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 09 - 存在
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 09 - 存在
話しがどもりがちになっているが、それは焦っているからだ。
おそらく、このゲームにそんなに厳しい禁止事項が制定されていることなんて考えてもいなかったのだろう。
「死なないよ。存在がなくなるだけだよ」
白ハクはそんな焦りまくった質問にも真面目に答える。
「えっ? 死なないの? でも、存在がなくなるなんて、どゆこと?」
ナジュは首をかしげなからそんなことを聞く。
俺はしばらく黙って見ていたが、白ハクは答える様子が見られない。
なるほど、これは興味深い。
おそらく、このゲームと直接関係のない質問には答えないのだろう。
要するに汎用的な質問は自分で調べるか、誰か他のやつに聞く必要があるということだ。
仕方ないから、代わりに俺が答えてやる。
「存在がなくなるということは、あんたが生まれてこなかったという歴史が刻まれるということさ。誰もあんたに出会うことはないし、あんたがこれまでやってきた事はすべて無になる。死んだところで、あんたの生きてきた証は確実に残るが、存在が無くなればそれすらも無くなる。まぁあんたがどう考えるか次第だが、死ぬのとはまったく違うから安心することだな」
このゲームを始めたのが高次元の存在であるなら、そのくらいのことはするだろう。
そいつらにとって、過去も未来も同一のものだからだ。
「しない、しない。絶対に安心しないよっ! それって、普通に死んだほうがずっとマシだって話じゃん。存在なくなるなんて、絶対イヤだよ。どうすんのさ、マヂで!」
焦ってはいるが、どうやらナジュの判断力は鈍ってはいないようである。
ただ、今までの俺と白ハクの話を聞いていて理解していたというわけではなさそうだ。
どうやら頭がキレる方ではなさそうだ。これはなかなか苦労しそうである。
問答無用でペアを組まされたが、この先いささか不安を感じる。
「とりあえず、だ。禁止事項のうちの四つに違反しなければ、存在を消される心配はないということだろう。それでは一応確認しておくが、英雄資格を剥奪される禁止事項四つを言ってみろ」
安心させた上で、俺は一度ナジュに確認しておく。
というのも、イマイチ信用できないからだ。
「えーっと……そんなのあったっけ?」
それがナジュの答えである。
やはりというか、まったく聞いていなかったようである。