第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 02 - 英雄契約
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 02 - 英雄契約
「ねぇ、ボクと契約して、英雄になってよ」
そいつは同じことを繰り返した。
どうやら、こいつはメッセンジャーのようだ。
ただ、移動した瞬間が俺にもわからなかった。
フェーズシフトしていない状態であるが、ただ早く動いただけなら、どんなに早く動いても気でわかる。
かといって、転送ゲートや瞬間移動の類ならそのためのシステムが必要である。
それらがまったくなく、移動できるとなると方法は限られる。
そして、俺にはこいつがどういった存在なのか、簡単に想像がついた。
「お前、高次元の存在に送り込まれたか」
たぶん言っても無駄だろうと思ったが、どういう反応を示すか一応確認しておくことにする。
「ボクと契約して、英雄になってよ」
やはり予測した通り、決まったことしか話さなかった。
だが、これでほぼほぼ大切な英語の勉強が中断されることになるのは確定した。
高次元の存在に対応するためには、どうしても50以上のフェイズシフトが必要で、地球上にいる状況でそんなことができるわけがないからである。
まぁ、無駄だろうなと思いつつ、俺は言ってみる。
「契約はしない。とっとと帰れ」
すると、ハクビシンの目が輝きだす。
「英雄契約確定しました。これより転送を開始します」
そんなんありか、と思うくらい強引な展開が始まった。
もっとも俺は、こうなるであろうと確信していたが。
いっさい判断能力を持たないメッセンジャーを送り込んできた以上、契約もなにも最初からこうなることはわかりきっていたのだ。
俺が腕組みした辺りで、周囲の光景が一瞬で変化する。
もちろん周りが変化したわけではなく、俺が移動したのだ。
まずは、ここがどこなのか把握する必要がある。
周囲を見回すと、ここは大きな部屋の中だった。
天井はあるが、360度どこを見ても壁は見えない。
その中には、俺と同じように周囲を見回して確認している連中が点々といた。数はそれほど多くない。
ただ、主にヒューマノイドタイプではあるが、人間とはかけ離れた容貌をしている連中もいる。
鳥のような容貌をした者や、岩のようなやつもいる。それなりに色んな種族が此処にいた。
おそらく、俺みたいにハクビシンに連れて来られた連中だろう。
戸惑ってはいるが、騒ぎ出すやつはいなかったので、それなりの資質がある連中が集められていると見ては間違いないだろう。