第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 01 - 白いハクビシン
第08話 宇宙英雄伝説01 クレアル海回廊会戦 - 01 - 白いハクビシン
最近はずっと忙しかった。
どう考えてみても、俺にとってマイナスにしかならない忙しさだ。
だが、それもようやく一段落した。
自宅には多くの居候共が住み着いており、騒がしい日常が続いているが手間を取られるわけではないのでどうということはない。
それに、改築して地下室を作った効果が現れており、以前に比べて家庭内での紛争が格段に減少している。
目の前に期末試験が迫ってきており、このままでいくと結構危ない所だったので、安心して勉強にうちこむことができるのはありがたかった。
特に深夜過ぎになると、すっかり静かになるので集中できる。
今夜は英語をやっている。最近は息をするように翻訳能力に頼り切っているので、一番苦手な教科となっていた。
いくら単語を暗記しようとしても、真剣になりきれない所がどうしても出てきてしまうのだ。
なので俺はしつこくしつこく、ひたすら単語をノートに書いていくことで克服しようとしていた。
ただ暗記しながら、ノートにスペルを書いていくだけの行為は非常に単調であり、とても眠気を誘う行為でもあった。
集中しているつもりでも、気がついたら頭がカクンと前に倒れてハッと気がつくということを何度か繰り返して、このままではダメだと思い椅子から立ち上がる。
気分転換をして、眠気を覚ます必要があった。
俺は少し夜風に当たろうと、二階の窓を開けて外を眺める。
するとそこには、白いフワフワとした物が浮いていた。
見た目でいうと、真っ白なハクビシンだ。だが、ハクビシンでないことは簡単にわかる。ハクビシンは空を飛ばないからだ。
そしてそいつは話しかけてきた。
「ボクと契約して、英雄になってよ」
非常に既視感を感じるセリフに、一瞬めまいのような物を感じたが、俺は間をおかず即答する。
「ことわる」
当たり前だ。こっちは目の前に期末試験が迫っているのだ、新興宗教の勧誘めいた誘いを聞いている余裕はない。
おかけではっきりと目が覚めた。
このまま英語の勉強に戻ろうと、窓を閉める。
ハクビシンモドキは何か言いたさそうにしていたが、知ったことではない。
そもそもが招かざる客なのだ、俺が気にかけるいわれはナノグラム程もない。
ところが、俺が後ろを向くとそいつが机の上にいた。
妙に可愛らしく、後ろ足で立ち前足を手招きするかのように動かしている。