第03話 ドラゴン・オリジンズ - 01 - 悪夢01
第03話 ドラゴン・オリジンズ - 01 - 悪夢01
どうしてこうなった?
俺の頭の中に浮かぶ言葉は、最近はそればかりであった。
リビングを占拠した二匹のメス・エルフが、ポテチをポリポリと食いながらフローリングの床に寝そべり、録画していたバラエティ番組を見てゲラゲラと笑っている。
時折ポテチ味になった自分の指を舐めた後、手近なところに置いてあるペットボトルに手を伸ばし、寝転んだまま器用に炭酸飲料を飲んでいた。
最初はこちらの言葉を覚えるという、それなりに崇高な目的で始めたテレビ視聴であったはずだった。
しかし、カタコトの言葉を覚え始めてからの堕落っぷりはそれはもう見事なものであった。
字が似ているからというわけではないだろうが、ほとんど墜落と表現したくなるような、高速の自堕落っぷりであった。
今では日常会話ならばほぼ完璧にこなすことができるくらいになっているはずであるが、このメス・エルフ共はテレビの前から動こうとはせず、手にしたリモコンを頑に離そうとはしない。お陰で、俺はテレビを見ることができなくなっていた。
情報に関しては、ネット中心な俺としてはあまり実害がないこともあり放っておいたこともこいつらの墜落っぷりに貢献した要因になっていることだろう。
俺としては、こいつらが将来的に肥大化したところでいっこうにかまわないのだが、その肥大化の源泉となっているのが俺の預金であるとなると話は変わってくる。
早々にバイトしてもらうか、それとも元来た発展途上異世界に帰ってもらうしかない。
俺には、ニートエルフを二匹も養えるほどの甲斐性はないのである。
最もあったにしても、俺が出す結論に変化はないが。
ここで問題となるのは、こいつらがすでに現代社会での暮らしにどっぷりと頭の先まで浸りきっており、てこでも俺の家から出ていきそうもないということである。
もちろん説得を試みたことはあった。一度ではなく、何度もだ。
最初の頃はそれなりに俺の話を聞いてはいたのだが、最近になると俺がその話を始めても、横になったままポテチをかじって、その後見た目だけはいい尻をぽりぽりと掻いてみせるくらいの反応しかしなくなっていた。
シリンに至っては、風呂あがりは家の中を平気で全裸でうろうろうろつき回り、冷蔵庫からキンキンに冷えた瓶牛乳を一息で飲み干して、ぷっはーっと満足そうに言うのが日課になっていた。
ルーファとシリンの二匹のエルフ共はおばはん化とおっさん化が同時に進行しており、ほとんど末期症状を呈していたのである。




