第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 68 - 真相
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 68 - 真相
いつまでたっても埒が明かないような話を続けるつもりはなかった。
「すみません、今から話しますので……。結局、我々はユイさんの話を信じなかった。そのことだけは、踏まえておいていただこうと思いまして。ただ、彼女の父親はルートワース政府とも深い繋がりを持つ人物であり、なにより今度の計画にワルキューレ☆ハートの存在はなくてはならなかった。理由は彼女らのステージを見られたらおわかりになると思いますが」
群衆に一切パニックを起こさせることなく、マドゥフへと導くのにワルキューレ☆ハートの存在は不可欠だと言っているのだろう。
そのことに関しては、俺も同意見である。
カガトの話はまだ続いているので、俺は話を聞くことにする。
「というわけで信じなくとも、彼女の意見をまったく無視できないでいました。さらに、これはすでにご承知の通り、マドゥフ以外の異世界との交渉はすべて破綻しました。残ったマドゥフとの交渉は断られはしないものの、まったくと言っていいほど進展がない。結果的にユイさんが提案した通りになったのです」
それで話しがユイへと繋がったわけだ。
だが、俺の質問の趣旨とは違う話しである。
「私は、ユイさんがどうして私のことを知っているのか、という意味でお聞きしたつもりなのですが?」
おそらく分かって話しているのだろうが、俺はあえてもう一度改めて聞き返してみる。
「我々はそこで初めて、ユイさんの言葉を信じることを前提にして、話を聞いたのです。そうしたら、彼女はこう話してくれました。前の宇宙で、何度も何度も、それこそ数え切れないくらい何度も助けられたのだと。正直、我々にはその意味はさっぱり理解できませんでした。想像してみることすらできませんでした。ですが、貴方がやってのけた奇跡を考えると、少しはその言葉の意味が理解できたような気がします。もしかして、貴方にはなにか心当たりがありますか?」
その話を聞いた途端、俺はめまいを感じた。
思わず額を抑えてしまう。
ぶっちゃけ、心当たりがあるどころの話ではなかったからだ。
「ええ、あると言えばあるような気がします……」
俺は、思いっきり言葉を濁していた。
どうやら、記憶をもったまま別の宇宙に転生していたのは、俺だけではなかったということらしい。
らしいというのは、ユイというスーパーアイドルを務められるような美少女に、まったく心当たりがなかったからだ。