第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 67 - ユイの秘密
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 67 - ユイの秘密
もちろん、カガトが伝えようとしている言外の意味を察したからだ。
最初に俺が乗り込み、後からカガトが乗り込んできた。
マータは自動運転なので運転手もおらず、完全に二人きりの空間がここに出来上がる。
護衛のSPは後ろの方から複数の乗り物に分かれて乗り込んだ。
少し待ち時間があり、マータが発進する。
しばらく走ったところで、ようやくカガトが話しかけてきた。
「その提案があったのは、実はユイさんからなのですよ」
その名前を聞いて、俺は一瞬耳を疑った。
なんとも突拍子もない名前が出てきたと思ったからだ。
「どういうことでしょう?」
俺は少し深く訪ねてみる。
「ユイさんはかつての貴方を知っているとおっしゃってました。もちろん、マドゥフと関係があるとかそういうことではなく、ルートワースに襲いかかる脅威を排除できる存在はあらゆる世界の中で唯一人、あなたしかいないと」
説明を聞いたら、さらに良くわからなくなった。
「すみません、やはり話が良く見えてこないのですが?」
俺は正直に話す。
このままだと、なんとかの生殺し的な状態が続きそうだ。
しかし、このイケメンやろうは、おかまいなしに今の調子で話を続ける。
「もちろんルートワース政府は、そんな話を真に受けるわけがありません。ただ、あなたが対マドゥフとの交渉において、重要な窓口であることは事実です。私が所属する調査機関を含めて、ルートワースの総力を上げてあなたのことは調べさせて頂きました。正式に分かった範囲では、貴方が日本国において普通の学生をされているということくらいです。ただ、非公式には不明な点が多すぎる。そのことが、ルートワース政府の正式な対応を遅らせることになった最大の要因です」
ようするに、ギリギリの対応にならざるを得なかった主因は、俺にあるということらしい。
もちろんそんなことで、俺に責任を問われるとしたなら、とんだ筋合いもいいところだ。
カガトは俺のそんな心理を読んだというわけでもないだろうが、言い訳めいた言葉を付け加えてくる。
「それと勘違いしないでください。ギリギリの対応になったことについて、貴方に一切の責任はありません。あくまでも、ルートワース政府の問題です」
当然である。
そう思ったが、口にはしないし、顔にも出さないでおく。
それに、俺が聞きたいのはその話ではない。
「それと、ユイさんのことがどう関係するのです?」
俺は核心に触れる質問をぶつける。