第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 66 - 終わりの後に
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 66 - 終わりの後に
舞台上ではクイーンの座を守ったワルキューレ☆ハートを称えるための授賞式が始まっている。
俺はそれを見ながら席を立つ。
すると、ユイがこちらを見ているような気がしたが、気のせいだろう。
なぜなら、そんなふうに感じたのは、おそらくこのドーム内にいるほぼ全員の観客だろうから。
そう感じさせるからこそ、星の数ほどもいるアイドルの頂点に立つクイーンなのだから。
俺は、これから閉幕式が始まろうとしている舞台に背を向けて、一人立ち去る。
十分すぎるほど関わった。
もう、俺が出来ることはなにもない。
会場となったドームを出ようとすると、そこにはカガトがいた。
いつでも相変わらずのイケメン野郎だ。
「最後までご覧にならなくてよろしいのですか?」
俺が近づくのを待って話しかけてくる。
「そちらこそ、主催者が立ち会わなくていいのですか?」
するとカガトは白い歯を煌めかして笑う。
「私はあくまで裏方ですからね。正直私の存在なんて大したことありませんよ」
カガトは主催者権限で、はちみつパンプキωを決勝トーナメントにねじ込んだ男とは思えないようなセリフを口にする。
もっともそれには、ルートワースの命運がかかっていたわけであるが。
俺はそんなカガトを見上げながら、聞いてみる。
「どうして、こんなギリギリ間際になるまで私に話さなかったんですか?」
普通交渉というものは、時間を掛けてやるものだ。
滅亡が決まる当日になるまで放置するというのは正気の沙汰とは思えない。
すると、いつもイケメンスマイルを絶やさないカガトが、初めて困ったような顔を見せる。
「うーん、これは言ってもいいんでしょうか、とても迷うんですが……」
言葉に詰まっていた。
本気で迷っているのだろう。
俺は、あえて問い詰めたりはせず、カガトの判断を待つことにした。
正直、今の質問で、ここまでの反応があるとは思っていなかったのだ。
政治が絡んでいるのなら、決断が遅れた理由を詳しく話せないことなどよくあることである。
もっとも、それが納得できるかどうかは別の話だが。
それに、カガトの困っている顔を見るのはけっこう楽しい。
そして、しばらくしてカガトは俺に提案してくる。
「ゲートポートまでお送りしますので、私のマータでご一緒しませんか?」
マータというのは、目の前に止められている乗り物らしい。
リムジンに良く似ていた。
「ええ、助かります」
俺は同乗することにした。