第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 65 - 優勝決定
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 65 - 優勝決定
そのタイミングで、カンム大統領の後ろに立っていた司会者によるアナウンスが入る。
「今から、マスター・オブ・クイーン・コンテストの優勝者を発表いたします。それでは、大統領閣下の口から、クイーンの座を獲得したのがどちらのユニットなのか発表してください」
カンム大統領は開いた封筒の中から、シート状の紙を取り出して確認する。
「マスター・オブ・クイーン・コンテスト、優勝者は、ワルキューレ☆ハートです」
ついに、カンム大統領の口から今回のクイーンの名が発表された。
この瞬間、はちみつパンプキンωの短くも長い闘いが終わった。
舞台上でワルキューレ☆ハートのメンバー全員が晴れやかな笑顔を浮かべて、カンム大統領と立ち位置を交代する。
その一方、舞台の後ろでは、はちみつパンプキωのメンバー全員が泣いていた。
イチリアが、アイカが、サリィが、シリンが、レヴンが、そして小島が泣いていた。
その脇ではリミィが上を見上げて一人泪を堪えていた。
俺の横では斉藤も泣いていた。
さすがにカージは苦虫を噛み潰したような表情を保ったまま、泪をこらえていたが。
俺はと言えば、それほど悔しくはなかった。
ぶっちゃけ、はちみつパンプキωのステージを見た直後、半ば勝利を確信してしまっていた。
あれ以上のステージなんて想像できなかったからだ。
ところが、ワルキューレ☆ハートは俺の想像なんて軽々と超えてきた。
いや、俺だけではなく、このドーム内にいる観客全ての想像を超えていたことだろう。
その証拠に、会場の何処を見回しても、異論がありそうな客などいない。
さすがにここ迄見せられると、悔しさなんて湧きようがない。
ただワルキューレ☆ハートを賞賛する以外に、何か出来ることが思いつかなかった。
それがどのような感情なのか表現するのはひどく難しい。
敗北感がないわけではない、だが圧倒的なものを見ることが出来た感動もある。
さらに言えば、当事者ではあるが、俺の立場は小島のような演者ではないし、リミィやカージのように常に寄り添いながら深く関わっていたわけではない。
かと言って、斉藤のように一線を画したような完全なる第三者とも違う。
たぶん、これは俺だけにしかわからないことなのかも知れない。
もっとも、俺自身がわかっているのかというと、それも怪しいものだ。
なんにしても、これで全てが終わった。