第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 62 - 最高を超える者
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 62 - 最高を超える者
彼の仕事は、長く続いたマスター・オブ・クイーン・コンテストを終わりへと導くこと。
今の暗転の中で、ワルキューレ☆ハートは全員舞台から姿を消している。
今のステージに、何か一点でも余計な一言が加わったら、それはとてつもない暴挙だと観客に受け止められかねない。
少なくとも、その危険性だけは避けられている。
司会は観客席に向かって大きく手を広げると、一つの宣言をする。
「これをもって、すべての対戦は終了しました。長い時間、ご覧いただきありがとうございました」
これを聞いて、会場全体から初めて声が聞こえ始める。
長く続いた祭りがついに終わろうとしている。
だが、司会の説明には続きがある。
「引き続きまして、観客反応の集計を行い、その結果が出次第優勝ユニットの発表と授与式を執り行います。それまでの間、しばしおくつろぎください」
それを聞いた観客が、少しばかりほっとしたような反応を見せる。
まだ、あと少しだけ祭りは続くのだ。
俺は、この時間を利用して、はちみつパンプキωの控室に行ってみることにした。
俺が立ち上がるのと同時に、斉藤とカージも立ち上がっている。
三人共考えていることは一緒だったということだ。
観客席から控室に向かう途中、俺は自分達の控室に入ろうとしているワルキューレ☆ハートとすれ違った。
一瞬、ユイと目が合ったがお互い何も言わずに素通りする。
ここはまだ闘いの場であった。
そういうことである。
控室には一番先にカージが入り、次に斎藤、最後に俺の順番で入る。
中では今頃メンバー全員がヘタっているかと思ったが、意外と元気そうだった。
「どうだい、見てくれたか? 最高のステージだっただろう?」
意気込んだ感じで話しかけてきたのはトレーナーであるリミィ。
それは、あれだけのステージをやってみせたのだ、そうなっても不思議ではない。
「で、どうだった? ワルキューレ☆ハートのステージ。観客は湧いてた?」
ラストステージにおいて、センターとしての役割をきっちり勤め上げた小島が聞いてくる。
どうやら、ワルキューレ☆ハートのステージは見ていなかったらしい。
なんとかイスに座ってはいるが、小島の体は小さく震えている。
とっくに体力の限界は超えているので、起きていられるだけ奇跡のようなものだ。
とてもではないが、見ていられるだけの余裕はなかったのだろう。
「いや、まったく。それどころか、歓声ひとつあがらなかったなぁ」