第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 60 - 最高のパフォーマンス
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 60 - 最高のパフォーマンス
観客の全員が、一人の少女によって心を掴まれた瞬間であった。
まるで、それに合わせるように、いままでアカペラで歌っていた小島の声に寄り添い、ボイスパーカッションが重なってゆく。
この時観客は間違いなく、魅了されていただろう。
たった六人の少女達に。
はちみつパンプキωによるステージが終わり、深々と頭を下げた瞬間、会場全員が総立ちになり雨のような拍手が沸き起こった。
大人も子供も、種族も関係なく、彼女たちのパフォーマンスは観客全員を感動させるに十分なものであった。
もちろん俺も立ち上がって、はちみつパンプキωのために惜しみのない拍手を送り続けた。
初めて見た時には、間違いなくポンコツアイドルユニットだった。
それが、ここまで成長できたというのは、間違いなく彼女たちの汗と涙があったからこそだ。
俺やカージ、そしてリミィの手助けがあったにしても、そんなものは単に手助けをしたに過ぎない。
彼女たちは、今彼女たちがやってのけることのできる限界を超えたステージを披露して見せることができた。
はちみつパンプキωがマスター・オブ・クイーン・コンテストにおいてやれることはこれで全て終了した。
だが、まだマスター・オブ・クイーン・コンテスト自体が終わったわけではない。
観客の興奮が覚めやらないまま、舞台上には司会者が登場する。
「はちみつパンプキωの皆様、素晴らしいステージをありがとうございました!」
司会者がはちみつパンプキωのメンバーを送り出す言葉を口にすると、また会場から割れんばかりの拍手が巻き起こる。
それは、メンバー全員が舞台を去るまで続いた。
「それでは、マスター・オブ・クイーン・コンテストのラストステージを務めるのは、当然この方たち。もう、私の解説など不要でしょう。前回の覇者ワルキューレ☆ハートのみなさんです! 」
はちみつパンプキωはもうこれ以上考えられない、そんなステージを見せてくれた。
観客すべての予想を超えた高みにまで連れて行ってくれた。
さすがにもう、これ以上はないんじゃないか?
いくらあのワルキューレ☆ハートであっても、そんなことは不可能なんじゃないか……そう誰もが思っていた。
俺も思っていたかもしれない。
ワルキューレ☆ハートのセンター、ユイと直接話したことがなければ。
ドーム内すべての照明が落ちる。
完全なる闇がドーム内を支配した。