第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 54 - リミィの判断
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 54 - リミィの判断
「マッサージは、いいんですか?」
俺が聞くと、
「ああ、マッサージはされる方も案外体力使うからね。コジマとサリィには今は無理だし、アイカとレヴンはそもそも必要ない。シリンはあたしに触られることを嫌がるから、やってあげられるのはイチリアだけだったのさ」
言われて俺も納得した。
トレーナーと言っても、ここまでくれば部外者とそれほど大差ないということか。
「それで?」
俺はさっそく本題に入る。
ここに連れて来られた理由の説明を求めたのだ。
「たぶんわかってると思うけど、コジマはもう限界を超えてる」
まったく歯に絹を着せることなく、リミィは切り込んできた。
「確かに」
俺は答える。小島を見た瞬間に察したが、さっき話した時そのことを確信した。
「でも、コジマは止まらないだろう。はっきり言って、このまま続けたら命に関わりかねない。だから、マジで危険になったらあたしは試合を止めるよ。その時はプロデューサーとして覚悟しといてくれ」
きっぱりと言い切った。
俺に止める止めないの判断を求めるわけではなくそうきたか。
俺は少しうれしくなった。
だが、もちろん表情は引き締めて答える。
「リミィ、貴女の判断を信じて、試合のことはすべて任せます」
それは、当然のことだった。
この中で最もメンバー全員の体調のことを知っているのは間違いなくリミィだ。
メンバー本人より体調のことはわかっている。
そんなリミィがダメだと判断したならダメなのだ。
その時はリミィが判断の判断に従って試合を中止さぜるを得ない。
少なくとも、俺の判断基準にはそれ以外の道は存在していなかった。
「たすかる」
リミィが右手を差し出してくる。
「当然のことです」
俺がリミィの右手を握り返しながら言うと、リミィはやたらと可愛い顔で笑った。
見た目幼女そのものだが、こんな笑顔をされると本気で好きになってしまいそうだ。
ひょっとするとカージは、この笑顔にやられたのかも知れない。
その時俺は、激しく行き交うスタッフが通る通路の向こう側から、じっと俺の方を見ている人影の存在に気付いた。
心当たりのある人物だ。
というよりは、この会場にいる誰もが知っている人物であった。
「そろそろ試合の時間が近い、私はこのまま中には戻らずに観客席に向かいますから、貴女は彼女たちについていてください」
俺はそう言ってリミィを控室に戻すと、俺を見ている人物の下へと歩いていく。