第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 53 - 満身創痍
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 53 - 満身創痍
それなのに、ここまで問題なく合わせているということは、それだけレヴンの実力が上がってきているということである。
「主様の名を汚さぬように、レヴンは死力を尽くしますわ。ですから、最後の闘いご覧になっていてくださいませ」
一番冷静そうに見えるレヴンであったが、なかなかどうして熱い想いを秘めているようであった。
次に声をかけたのはイチリアであった。
丁度リミィからマッサージを受けている所であった。
「どうだ、迷いは吹っ切れたか?」
この娘は、メンバー内で一番やっかいな家庭事情を持っている。
「もちろん。今は、ワルキューレ☆ハートに勝つことしか考えてません」
うつ伏せのままで、くぐもった声であったが、良い返答が返ってくる。
そして、俺は最後に小島に声をかける。
最後に回したのは、もちろん小島がワルキューレ☆ハートのリーダーだからである。
小島は額の上にタオルを乗せて、床の上で大の字になっていた。
ただ寝ているわけではなく、目を開いて天井を見ている。
おそらくというか、間違いなくメンバーの中で一番体力がないのは小島だろう。
「いいのか? 寝とかなくて」
俺は小島の頭の所で屈み込み、上から覗き込むようにして尋ねる。
「寝たら起きれなくなっちゃいそうだから」
というのが小島の答えだった。
それはつい最近まで普通の女子高生だった女の子が、いきなりギリギリの闘いの連チャンをやってのけてるのだ、おそらく体力の限界はとっくに超えてしまっているのだろう。
今の小島を支えているのは、仲間の力なのだろう。
もっとも、それでも立ち上がって闘い続けるのは彼女自身の力なのだということは決して変わることはないが。
俺はそれ以上、はちみつパンプキンωのメンバーに話しかけるのはやめにする。
今の彼女たちは肉体だけでなく、精神も極限まで追い込んでいる状態である。
どんな言葉をかけるにしても、それは余計な負担になるだけである。
俺が黙って離れると、リミィが寄ってきた。
俺よりも頭一つ以上小さいリミィは、見た目幼女の姿で俺の腕に自分の腕を絡ませてくる。
これが日本国内だったら、俺はおまわりさんを呼ばれているかも知れない。
リミィは腕を絡ませたまま、俺を出口の方へと引っ張っていく。
抵抗するのは簡単だが、そんなことをしても何の意味もないので俺は連れていかれるまま控室の外にでる。
途中レヴンが何か言いたさそうに睨んでいたが、気づかないふりをした。