第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 52 - 辛勝
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 52 - 辛勝
そう、観客をわかせることでは、ふわふわマジックの圧勝だったかも知れない。だけど、観客の心を掴んだのは、はちみつパンプキωであった。
トーナメント最終戦の結果発表の場で、僅差ではちみつパンプキωが勝利する。
それが終わって、今メンバー全員が舞台上から控室に戻ってきたところであった。
「まぁ、だいたいこんな感じかな。それと、なぜか決勝戦の開始時刻が一時間ほど伸びた。おかげでこっちは助かったが、なぜなんだろうな?」
説明を終えたカージが、何かしらないかと俺に聞いてくる。
「さぁな。まぁ、ラッキーってことで良いんじゃないか?」
心当たりはありまくりだが、俺はすっとぼける。
真相が漏れていたら、今頃マスター・オブ・クイーン・コンテストどころではなかったであろう。
これは隠すしかない情報である。
「なんか、腑に落ちないが、確かに不利になることはないからいいか」
カージはあっさりと納得してくれた。
こういう所は色々とありがたい。
俺は部屋の隅で、一人で体をゆっくりと動かしながら柔軟運動を続けていたサリィの所へ寄っていく。
今朝事務所に一人残って怯えていた弱い女の子の姿は、もうそこにはなかった。
「調子はどうだ?」
俺は当たり障りのない感じで声をかける。
「いいわ、絶好調よ」
相当疲労しているはずなのに、サリィは即答する。
俺は次にアイカに声をかける。
柔軟体操をやっており、メンバーの中では圧倒的に体を鍛えていただけあり、疲労の度合いは少なそうに見える。
「いけそうか?」
俺の言葉に、アイカは開脚前屈をしたまま顔を上げずに答える。
「余裕だね」
実に頼もしい答えが帰ってきた。ただ、以前と違うのは実績による裏付けがあることだ。
俺はアイカの隣で仰向けになって体を休めているシリンに声をかけようかと思ったのだがやめにした。
いくら強気で危険な生命体であっても、基本シリンは魔法少女なので、このままゆっくと体力回復に専念させたほうがいい。
シリンをスルーして俺はレヴンに声をかける。
「だいぶ良い感じに仕上がってきたな」
アイカは体力オバケであるが、魔王ゼグルスの血を引いているレヴンは別格である。
おそらく残っている体力はマスター・オブ・クイーン・コンテストが開始直後とあまり変ってないはずだ。
だからこそ、逆に他のメンバーと合わせることは困難になる。