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第02話 VSヴァンパイア!-21 - 後始末3

「チロ。それなら、今すぐ着替えてもらおう」


 俺は、持ってきていた自分の鞄の中から、ジャージを取り出してチロに向かって押し付ける。


「はいっ。よろこんで!」


 それを受け取り、どこかのブラック的な返事を返す。

 どうやら適当につけた名前も受入れたようだ。もっとも受入れなかろうが、俺はそれで押し通すだけだが。

 愛玩犬のようにはぁはぁしながら着替え始めたチロを見ていて、俺はまったく想定していなかった事態に出くわすことになった。

 ちょうどその時、ルーファを抱えた斉藤がようやく保健室に入ってきて、喜びに満ち溢れた驚きの声を上げたことからもそれは明らかである。


「おおっ?……おおおおお!!」


 極めてスレンダーではあるが、それでもきちんと出る所は出て引っ込むべき所は引っ込んでいる……。などという曖昧な表現はやめておこう。

 ようするに、美乳と表現するに相応しい乳房と、十分に丸みを帯びた臀部。その股間には男性器はなく、極めて薄い茂みの中に割れ目がはっきりと見えている。


「チロ……女、だったのか?」


 俺は、遠慮することなく着替えを続けるチロの肢体を眺めながら尋ねると。


「はいっ。ごしゅさまっ!」


 チロは嬉しそうに即答する。

 確かに美貌だったし、今となっては男装の麗人と思えるような節も多々あった。

 だが、あまりのナルシスっぷりに、俺の目が拒否反応を起こしていたのかも知れないような気もする。

 それに、小柄な俺のジャージはチロにとっては明らかに小さすぎる。伸縮性に富むジャージとはいっても、袖丈と足の長さが明らかに違うのでだいぶはみ出している。ようするに、俺よりもだいぶ長身なのだ。

 この辺りも、俺自身のコンプレックスを刺激しつつ、男なのだろうという思い込みにつながったのだろう。

 だが、男ならばともかく、女だと判明した場合、色々と状況が違ってくる。

 特に、俺の名誉に関わるような問題が発生してくる。そこだけは、きっちりと釘をさしておく必要があるだろう。


「チロ。いいか、二度と俺のことを『ごしゅじんさまっ!』などと呼ぶな」


 こんなのにつきまとわれて、行く先々で『ごしゅじんさま』呼ばわりされたら、俺は確実に変態の烙印を押されることになる。

 今はまだ誰もが状況を把握できていない混乱の中にあるのだからいいとしても、ほどなく必ずそうなると確信できる。

 だから、そうなる前に手をうつのだ。

 そもそも、俺はこいつの『ごしゅじんさま』などになった覚えはない。俺にとっては、いきなり野良犬に噛み付かれたようなものである。災難以外の何物でもない。


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