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第01話 ミシュタール召喚-02 召喚士と魔女

 同時に教室の中だった景色は一変し、怪しげな思いっきり薄暗い洞窟の中に俺は立っていた。

 篝火に照らされる位置に長耳の女が一人。

 その左横に、杖を手にした女が一人見える。

 さらに気を探ると、それ以外に俺が立っている位置から死角になる位置に五人いるようであった。

 俺の足元にはまったく読めない文字で描かれた円陣がある。

 どうも、魔法陣っぽい何かだ。


「貴方の名前をお聞かせください」


 現地の言葉だ。

 話している意味が分かるのは、もちろん言葉が理解できているわけではなく、転生前タウタニッシュ星で言語を介さず意味を読み取る技を習ったからである。

 ちなみに、俺の話している言葉の意味を相手にわからせることも可能である。


「鳴瀬和美。あんたは……っていうか、ここはどこだい?」


 言いながら気を探る範囲を惑星規模にまで拡大してみる。

 数は多いがどれもこれも、非常に小さな気ばかりである。

 少し大きい物もあるが、それも他と比較すればという程度である。


「私はハイエルフのルーファ、召喚士をしています。ここは、ミシュタール。先日勇者が魔王に斃され、それに変わる勇者として私が貴方をここに召喚しました」


 俺は、話を聞いて理解した。

 どうりで、この星には馴染みのある気が見つからないわけである。

 おそらく全宇宙規模で探ってみてもみつからないだろう。

 俺がいる世界とはまったく別の世界である、ということだ。

 そうなれば、俺が言うことは決まっている。


「迷惑だ。今すぐ帰してもらおう」


 なにしろ、こっちはとても重要な、二度目の人生にしてようやく体験できようという夢がかかっている。

 ネットもスマホもないような、発展途上世界になんぞ、なんの用もない。

 俺のぞんざいなセリフが気に入らなかったのか、ハイエルフのルーファの左隣に立っていた杖を持った女が話す。


「そいつからは、なんの力も感じない。召喚、失敗したんじゃないの?」


 さっきから、杖を使って何かを探っている気配は感じていたのだが、どうやら俺の力を測定していたらしい。

 ただ、今の俺は自分の気を完全に消しているので測定できないのだろう。

 もちろん、そんなことなど教えてやる義理はまったくないので、ありがたくその言葉に便乗することにする。


「そのとおり。俺はなんの役にもたたんぞ。だから、早く帰してくれ」


 特に、早くという部分を強調して主張する。

 ところが、俺の希望をあっさりと踏みにじったのは、俺を召喚したと言うハイエルフのルーファであった。


「シリン。こうして召喚が成功した以上、この者が勇者の資質を持っていることは疑いようのない事実です。もし、失敗したのだというのなら、貴方の持つ魔法を使って試して見られたらよいでしょう」


 いきなり、話が物騒な方へと向かって流れ出しているような気がする。

 だが、俺が十分に迷っている時間がないままに、シリンと呼ばれた女は俺に向かって杖を掲げる。

 なんらかの力をためているようだが、俺は黙って様子を見ることにする。

 騒ぎ立てるほどの力ではなかったからだ。


「黒き闇より生まれし赤き炎よ、火球となりて敵を滅ぼせ! ファイアーボール!」


 もしそれが魔法なんだとしたなら、そんな感じなんだろうなというようなセリフを言い終えると、掲げた杖の前に人の頭ほどもある炎の球体が出現する。

 そして、それは当然のように俺に向かって飛んできた。

 なんのつもりなのかは知らないが、俺は自分の制服が焼かれるのはごめんなので、そっと息を吹きかけて消しておく。


「なっ……き貴様、今何をやった!?」


 勝手に妙な技を使ってきた、美女ではあるがアブナイ女が驚愕している。

 彼女だけでなく、一瞬で消えた火球を見て、それを見ていた全員が驚いたようだ。

 俺としては、ロウソクを消す時と同じことをやっただけなので、そんなに驚かれると逆に引いてしまう。


「吹き消したけだよ。見てただろ?」


 少々脱力気味に俺が言うと。


「この高位の黒魔導師であるシリンをからかっているつもりか? 初級黒魔法のファイアーボールといえど、ゴブリン一匹くらいなら仕留めることができる。それを吹き消したなどと、誰が信じる?」


 やれやれ、やはりあれは魔法だったわけだ。

 ということは、ここは俺がいた宇宙とは別次元の世界ということになる。

 予想していたこととはいえ、へこむなぁ。


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