第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 44 - 勝利報告
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 44 - 勝利報告
戦争において、わざわざ不利になるとわかっていることをするやつなどいないという話である。
今カンム大統領と交わした握手の裏には、そういったことも含まれているということである。
もちろん、俺もカンム大統領もそういったことを承知で交渉をやっていたので、特にそのことが問題になるようなことはない。
俺はカンム大統領の手を放すと、そのまま部屋を退出する。
さすがにここからは急ぐ必要があった。
外に出たとたん、カガトがよってきた。
この状況にもかかわらず、相変わらずイケメンスマイルは健在である。
「一回戦の結果がでました。はちみつパンプキωは虹色スーパームーンに勝利しましたよ」
前振りとかは一切なく、いきなり伝えてくる。
「ありがとう。一つ聞きたいのですが、このことをワルキューレ☆ハートのメンバーは?」
俺は簡単に礼をいい、その後ふと思いついた質問を投げかけた。
するとカガトは、短く答えてくれる。
「本大会の出場者の中で唯一……」
承知していたというわけか。
俺は改めて、はちみつパンプキωが目指しているところが、如何に高みにあるのかということを思い知った。
とはいえ、今はルートワースを救わなくてはならない。
俺は館内移動用の乗り物に乗せられて、巨大ドームから少し離れた場所で地上に出る。
俺は周囲と上空を見て安全を確認すると、フェイズ1から2へと段階的にフェイズシフトを行いながら大気圏外まで一気に加速する。
地上への影響を考えて、ラグランジュポイントを過ぎた辺りでフェイズ4まで持っていく。
俺は『ドラゴン』の気をさぐりながら、フェイズ6へともっていきさらに加速した。
ここまでくると光速を超える移動が可能となるので、ルートワース星系をなんなく離脱することができる。
ルートワース星系に被害が及ばなくなる頃合いを見計らって、俺はフェイズ10へと持っていく。
今回は、これが闘いの基本となるだろう。
むやみやたらと図体のでかい『ドラゴン』と違って、俺は圧倒的にスピードにおいて勝っている。
俺は『ドラゴン』の気を見つけると、全力で移動を開始する。
直接ぶつかるのではなく、『ドラゴン』の進行方向に立ち正面から相対する形で気砲を放つ。
もちろん全力ではなく、足止めさせることが目的だ。
普通の気砲なら『ドラゴン』の体を貫いていただろうが、拡散させた気砲は光速を超えて移動する『ドラゴン』の巨体を無理やり停止させた。




