第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 43 - 交渉成立?
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 43 - 交渉成立?
油断するとかしないとか、そういうレベルの問題でもない。
問題となるのは、その後の対応であった。
一光年先というのは、あまりに至近距離すぎて闘いの影響をもろに受けてしまう。
「あ、ああ分かった……。やはり、どうにも信じられないが、観測はさせてもらう。ただ、長時間は待てないぞ」
さすがにこの提案には、カンム大統領も乗ってこざるを得なかった。
観測しているだけなのだから当然だと言えば当然である。
「それほどお時間はとらせませんよ。ルートワースへの影響を極力少なくするために、慎重に戦わなければなりませんが、それだけのことです」
俺はとくに気負いなく言ったつもりだったのだが。
「かなりの自信だな。わかった、それではやってもらおう」
どうやらカンム大統領は、俺の言葉を自信の現れの発露だと受け取ったようだ。
まぁ、そのあたりはどうでもいいことである。
「時間はかかりません、すぐに結果はご提示できると思います」
今度の闘いは護衛対象から一光年先という至近距離での戦闘だ。非常に繊細な闘いになる。
状況しだいでは長引く可能性も高かったが、少なくとも決勝戦までには戻ってくるつもりであった。
はちみつパンプキωが、最後まで勝ち残ってくれることを信じるしかない。
「それでは、良い結果を期待している」
その言葉とともに、カンム大統領は右手を差し出してきた。
俺は自信ありげな笑顔を作り握り返したが、結局どこまで相手が信じたかはまったく当てにしていない。
そもそも俺にはまったく伝えてこなかったが、交渉が決裂した時のために軍事オプションも検討しているはずなのだ。
この上にある巨大ドームが異世界間ゲートとなっていると言った。
だが、これほど巨大な地下施設を作ったのはなんのためなのか?
一体ここあるものはなんであるのか?
わざわざ質問をぶつけたりはしない、絶対に答えないことがわかっているからだ。
その上でここを会見の場所に、ルートワース大統領が選んだ理由を察しろと暗黙の内に伝えてきている。
要するに、脅しの意味もあるということだ。
交渉が決定的に決裂しない間は、軍事オプションは匂わせる程度にとどめておく。
外交交渉の基本であった。
もちろん、やる時は突然だ。わざわざ敵に伝えたりはしない。
宣戦布告などという妄想を信じているのは、歴史を知らない者達だけだ。




