第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 40 - 『ドラゴン』
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 40 - 『ドラゴン』
俺はカンム大統領の反応を見ながら、そう前置きをする。
「ああ分かった、話してくれたまへ」
カンム大統領は俺の向かい側の席で、ソファに深く座り直しながら答えた。
信じる信じないというのはともかくとして、俺の話しを聞くということは受け入れてくれたようだ。
俺としてはそれで十分である。
「運がよかったのか悪かったのかはわかりませんが、その世界で『ドラゴン』が生まれたのは宇宙の中で対となる文明と最も離れた場所でした……」
そう語り始める。
俺は自分の記憶をたぐりながら語るわけだが、話しの大半は伝聞である。というのも、俺がその闘いに参戦したのは最後の方だけで極短期間に過ぎなかった。
だから、発端から俺が関与するまでの流れは、記憶を掘り起こしながら情報を整理する必要があったのである。
で、俺が頭の中で整理した内容というのは、次の通りである。
宇宙の一番遠い場所に誕生した『ドラゴン』が、対となる文明と初めて接触するまでに一万年もの時間が過ぎていた。
接触した時には文明の持つ科学力は、複数の銀河を領土とするまでに発達していた。
その頃の『ドラゴン』は星系規模に成長していたが、一個艦隊でも十分に闘うことは可能だった。
だがここで、その文明にとって想定外のことが起こる。
『ドラゴン』は艦隊との闘いのなかで、急速に成長を初めたのである。
接触した直後、まだ星系クラスのうちに殲滅してしまえばよかったのだが、戦力の逐次投入を繰り返した結果『ドラゴン』はその文明の持つ科学力では対抗できない規模にまで成長してしまう。
そして、敵なしの状態にまで成長した『ドラゴン』は、一つの銀河に存在する全ての文明を喰らい尽くしてしまった。
そのことで最終的に『ドラゴン』は銀河クラスにまで究極の進化を遂げてしまう。
複数の銀河文明を喰らい、さらなる力を蓄えた『ドラゴン』に対抗するために、対となる文明は天の川銀河に最終防衛ラインを設定して最後の闘いを挑んだ。
俺がこの闘いに関わったのは、まさにこの時である。
太陽系には一個艦隊が派遣されてきた。たまたま防衛ラインの一画として設定されたからだ。
俺はその艦隊に接触して、すべての事情を聞いた。
その艦隊を作り上げた種族がアーリアスと呼称していることもそこで知る。
そして地球を含む太陽系を守るため、闘いに参戦することになったのである。




