第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 39 - 提案
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 39 - 提案
俺は一切脚色を交えず、事実のみを話すことに徹する。
ただそれでも、容易に受け入れられる話しではないはずだ。
当然カンム大統領も疑問に感じるはずである。
「なぜそのことを?」
知ったのかと聞いてくる。
俺は、あえてその質問のことは保留にしておいて、先を続ける。
「そいつは、より高度な文明を喰らうことで成長しますが、自身を生み出すことになった文明を喰らうとそこで消滅します。今の状況に当てはめて考えると、三つの対応策が考えられます」
俺は視線をはずさず、真っ直ぐカンム大統領を見ながら話す。
何かを感じたのかも知れないが、今度は何も聞いてこなかった。
「もちろん一つは今計画中の対応策を進める選択肢です。ですが、ルートワースがそいつを生み出す母体となった文明だった場合、ルートワースの国民と避難に使われたマドゥフ両方の文明が消滅することになります。この選択肢が一つ。二つ目は、別に母体となった文明が存在した場合。それだと通り道となったルートワース星系は永遠に失われますが、国民自体は生き延びることができるでしょう。そして、三つ目……」
俺はあえてここで一旦言葉を切っておく。
おそらく、ここから先話すことは人によってはとんでもない妄想の類に聞こえるからだ。
俺は、カンム大統領がじっと俺の話しを待っていることを確認してから話しを再開する。
「この世界に残り、やつと闘うという選択肢です。やつの母体となった生命体がなんであれ、闘ってやつの方を消滅させてしまえばそんなものなど関係なくなります」
今話したこの提案は、すべて俺の経験に基づいたものであった。
だが、こんな話しをいきなり聞かされたカンム大統領の反応を、俺は予測することができる。
口ではなんと言うのであれ、内心ではこう思うはずだ。
それが出来るようなら、こんなに苦労することはないと。
「それに関しては真っ先に検討した。そして、どの魔法学者であれ同じ結論しかでなかった。我々が勝利できる可能性は皆無であると。星系クラスの強大な敵に有効なダメージを与えられる兵器など存在しない」
これで二度目となる説明を、カンム大統領はめんどくさがらずにしてくれた。
もちろんそれは、俺が想定した通りの反応であった。
「これから話す内容は、私自身が直接関わり知った内容です。それともう一つ、それは私が関わった異世界では『ドラゴン』と呼ばれていました。その上で、どうか最後まで聞いていただけますか?」




