第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 37 - 経緯
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 37 - 経緯
だがこの方法だと、どうしても一度に大量の難民を受け入れ可能な異世界が必要であった。それと同時に、技術的な問題もクリアする必要がある。
現在使っているゲートポートでは、到底国民全員の避難など不可能である。
そこでルートワース政府は大量の人間を同時に移動可能な、巨大ゲートを作り異世界への避難を実行するという計画を立てた。
その巨大ゲートとは、この場所の頭上。すなわちこの巨大ドームそのものである。
ちょうど開催されようとしていたマスター・オブ・クイーン・コンテストを利用する形で計画は極秘裏に進められて、技術的な問題はすべてクリアすることができた。
だが、現時点において最も重要な案件である、受け入れ先の確保が難航していたのである。
なにしろ、惑星国家そのものの人口を受け入れ可能な異世界など、実質的にそうそう存在するはずがなかったからである。
それだけの人口を支えるための食料とエネルギー、そして土地。
あまりにハードルが高すぎたのだ。
だが、そこにマドゥフという異世界が現れた。
とてつもない規模のエネルギー資源を持ち、受け入れるに必要な広大な土地もある。
食料の確保は問題だが、それは膨大なエネルギー資源を使えば今のルートワースの技術で不毛の大地を緑化可能だという報告が魔法学者によって出されている。
食料生産が開始されるまでの間は食料備蓄を消費することによって、なんとか乗り切ることが可能であるという結論もルートワース政府が設置した破滅的危機対策室より出されている。
ここまで話しが進んでいる状態で、後は実際の受け入れ許可をマドゥフ側にもらう必要があった。
それを魔王ゼグルスに対してルートワース政府は求めて続けてきたが、まったく返答がないまま最終的に俺に泣きついてきた。
もちろん、俺が現在直接マドゥフに関わっていないことくらい調べているだろうが、今動き出さなければ手遅れになってしまう。
ようするに、俺はルートワースにとって最後の命綱というわけであった。
わざわざカンム大統領が俺と二人だけで直接会い、交渉というより懇願してきたのは最早後がないということの実証でもある。
これで、ルートワースの状況だけでなく、ルートワース政府とカンム大統領の意図も理解できた。
次は俺が対応する番である。
「わかりました。そういうことであるなら、私の方も正直にお話しましよう。私が間に入ったからと言って、この交渉はうまくいくことはないでしょう」




