第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 35 - 機密情報
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 35 - 機密情報
俺はカンム大統領が腰を下ろすのを待って、自分も腰を下ろす。
この辺りは無難な手順を踏んでおく。
俺が座るのを待って、カンム大統領は話しを切り出してきた。
「あなたのおかげで、ルートワースとマドゥフはこれまでのところ良好な関係を築きつつある。その節は尽力いただきありがとう」
政治家らしく、最初は当たり障りのない所から入ってくるつもりのようだ。
「それはそれは、わざわざありがとうございます」
俺はまったく内容を伴わない礼をしておいた。
ここら辺りはお互いに社交辞令だと分かっているので、まったく型どおりものである。
俺に時間がないことは理解しているはずなので、本題はこの次からとなるだろう、と予想してカンム大統領の言葉を待っていると。
「実は、本日このような形で来てもらったのには理由がある」
ここまで話して、カンム大統領は身を乗り出してきた。
俺はそれはそうだろうと思いながら、黙って話しの続きを待った。
「まずは、これを見て欲しい」
そう言いながら俺の目の前に置いたのは一枚の写真だった。
それも普通の写真ではない、明らかに宇宙空間を映した天文写真である。
「手にとっても?」
俺は一応確認を入れてみる。
「もちろん」
カンム大統領は即答する。
俺はすぐに写真を手にとって見る。
一見すると、単なる星々の写真のように見えるが、詳しく見ると写真中央に何かが映っているのが分かる。
そこだけ切り絵のように、星が存在していないからだ。
つまりそこには、星の光を遮断している何かが存在しているということであった。
「詳しいことは分かってるんですか?」
俺はそんな風にカンム大統領に訪ねたが、それがなんであるのかはおおよそ察しがついている。
「まぁ、概要というか、計測された事実だけだがね」
カンム大統領の表情は一国の長を務める政治家としては、極めて悲痛なものであった。
もし仮に国民の前でこんな顔をしたなら、それだけで問題になりかねない。
「ありとあらゆる観測を積み重ねた結果、現在それはルートワースが存在するこの星系からおよそ一光年ほどの位置に存在していることがわかった。大きさはほぼルートワース星系の半径と同じくらい。それが、光速の四百倍ほどの速度で我がルートワース星系に接近している」
絶望的になる理由はそれだったわけだ。
「到着まで、もう24時間切ってますね」
俺が話したのは、ルートワース星系の残り時間だ。




