第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 34 - ルートワース大統領
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 34 - ルートワース大統領
エレベーターを降りると、武器を装備した歩哨が通路に立っていた。
明らかに警官ではなく、軍人である。それも、護衛任務に特化した。
ちなみに、わざわざ指摘しなかったが、下階では軍製のタレットや監視装置、それに見えない位置に軍人が配備されていたことに俺は気付いていた。
カガトはまだ黙ってはいるが、おそらくこれから俺が会いにいく人物と関係あるはずだ。
そして、ルートワース軍が此処までして護衛しなくてはならない人物など、俺には一人しか思いつかない。
通路の先にある扉の前に立つと、その前にいた歩哨が俺のボディチェックを始める。
俺だけではなく、カガトも一緒にだ。
とても厳戒な警戒態勢の下、ボディチェックを済ませた俺とカガトはドアを開ける。
自動ではなく手動なのは、もちろん護衛の一貫だろう。
部屋の奥には大きな机が置いてあり、机の前にはコンソールが開かれている。
そして、その机の向こう側には、俺の倍くらいはありそうな体格の持ち主が座っていた。
俺は躊躇なく進み、その男と向かい会う。
「ようこそ、ナルセくん。こんな場所ですまないが、どうしても君とは合っておく必要ができてしまった。そこで、カガト君にお願いして来てもらった」
男は机の向こう側の席から離れて、俺の方へと近づいてくる。
その途中、それまで付き添いで来ていたカガトに合図を送ると、カガトは一礼して部屋から出ていった。
ここでカガトの役割はお終いということなのだろう。
「改めて、ようこそナルセくん。私はカンム、ルートワースの大統領をやっている」
俺の正面まできた男は右手を差し出しながら、自ら名乗った。
「お会い出来て光栄です、大統領」
俺はカンム大統領の右手を握り返しながら、誰もが口にするであろう言葉を口にした。
カガトが政府の諜報機関の人間で、けっこうダーティな役割を果たしているという情報は掴んでいた。だがさすがに大統領直属で動いてることまでは掴んでいなかった。
ということは、彼らの狙いがわからないということである。
良いように使われたくなければ、相手の出方が分かるまでは型どおりの応対に徹した方がいいだろう。
俺はそう判断する。
どのみち相手が呼び出したのだ、俺の方から仕掛ける必要もない。
「とりあえず、こちらの席へ」
そう言ってカンム大統領が案内したのは、見ただけでも年代ものの相当な価値があると分かる応接セットであった。




