第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 32 - やり過ぎ
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 32 - やり過ぎ
だがそれは、目の前の闘いを無視していいという理由にはならない。
「勝った気でいるなら、俺もさすがに止めるさ。だが、あいつらは勝つ気でいる。それと、あんたに言ってなかったが、さっきのパフォーマンスで見せたボイパは、はちみつパンプキω最大の隠し玉さ。あれ以上のものなんて用意してこなかった。それを初戦にぶつけた。だからもう、彼女らに後はねぇ。下がることができねぇ以上、先に進むしかねぇだろ? 何が何でも勝つっていう気持ちだけが、今のあいつらを動かしている。だから俺は、あいつらを止められねぇんだ」
その話を聞いて、俺は苦笑していた。
そう言えば最近、圧倒的に強い相手と闘ったことがなかった。
前の宇宙ではそういう闘いの連続だったのに、ついついそういう気持ちを忘れてしまっていたのかも知れない。
だが、それでもだ。
「まぁ、その話分からんでもない。かつては俺も、そんな感じだったからな。けど、ほどほどにしとかないと、戦う前に負けることになるぞ」
やはり俺は警告する。
力というものは、無限ではない。
限界を超えるためにも力は必要なのだ。
「ふっ。そりゃそうだわな。俺も熱くなりすぎてたようだ。……わかった、適当なところで俺が止めるよ。あやうく、足元を見失うとこだったぜ。すまねぇ、助かった」
カージがそんな事を言ってくる。
まぁ、さすがに礼なんて言われるいわれはないので指摘しておく。
「忘れてるかもしれないが、こう見えても俺ははちみつパンプキωのプロデューサーだ。名目上に過ぎなくてもな。だから礼など言われる覚えはない」
すると、今度はカージが苦笑を浮かべる番だった。
「ははっ。そりゃそうだな、以後気をつけるさ」
どうやら、これ以上俺が口出しすることもなさそうだ。
そう判断した俺は、会場にある自分の席に戻ることにする。
はちみつパンプキωの控室を出ると、思いがけない人物が立っていた。
一度だけ会ったことがある、あのイケメンCEOである。
名前は確か……。
「カガトさん、でしたね? お久しぶりですね」
俺は笑顔を作って右手を差し出した。
もう二度と会うこともないだろうと思っていたのだが、やはり俺の思惑通りにはさせないつもりらしい。
「はい、ナルセさん。今日は、想像以上に素晴らしいパフォーマンスを見せていただいて、感激しましたよ」




