第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 31 - 控室
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 31 - 控室
もちろんこのことは誰にも言ってないが、俺の中では決定事項だ。
「そうだな、その日を楽しみにしてるよ」
俺はいけしゃぁしゃぁと言ってやった。
まぁ、この時点では嘘は言っていないので、何も問題ないはずだ。
「ちっ、あんた、ほんっとやりづらいやつだよ」
そう言い残して、カナエは待たせている仲間の下へと帰っていった。
俺はそのまま真っすぐ、はちみつパンプキωの控室に向かう。
中に入ると全員が一斉に俺の方を見る。
ゆっくりとくつろいでいるか、それとも結果がでるまで不安そうにしながら体を休めているのかと思ったが、まったく違った。
部屋の中央にリミィが立って、メンバーの動きを確認しているところであった。
「ほらほらよそ見してんじゃないよ。サリィ、少し動きがもたついてる。やる気あんの?」
全員の視線が集まったのはほんの一瞬で、すぐにリミィによる叱咤が飛ぶ。
彼女らがやっていることとは関係ないのはカージだけのようなので、俺はカージに近付いていく。
カージは背もたれを前にして、またがる格好でイスに座っていた。
あまり行儀のいい座り方ではないが、カージには妙に似合っている。
「やらせといて大丈夫か? 今試合終わったばっかだろ?」
俺は常識的な話をカージに振ってみる。
するとカージは俺の顔を見ることなく答える。
「あいつらは、みんな先をみてんのさ」
厳しい指導を繰り返すリミィ、それに一切文句を言わずに食らいついていく、はちみつパンプキωのメンバー達。それを見ながらの言葉であった。
「おいおい、正気か? 試合前ならともかく、今は試合中だぞ? 本番で疲れて動けませんでしたなんてことになったら洒落になんないぞ」
俺は呆れたように言う。
ぶっちゃけ、今の俺の言葉に嘘偽りはない。
成長することを望んではいるが、やり過ぎたらすべてをぶち壊すだけだ。
さすがにそれは俺の本意ではない。
「言っただろ、先を見据えてるって。彼女ら全員わかってんのさ、今のままじゃワルキューレ☆ハートには絶対勝てないって。ワルキューレ☆ハートとの決勝戦までに試合は五回しかねぇ。それじゃ、時間が足りねぇってな」
俺はその話を聞いてさらに呆れる。
「おいおい。まだ、虹色スーパームーンとの対戦結果すらでてないんだぞ。いくらなんでも、先を見据えすぎじゃないか?」
俺だとてワルキューレ☆ハートとの対戦は考えてはいた。




